人は自分にしか興味がないのが、大前提だ。コンテクストをいかに作るのか。
コルクラボ 編集専科を立ち上げる。
今まで職業を大きく転換することは、個人にも会社にもリスクを伴った。編集者という職に興味を持つ人は多い。しかし、どんな職業か詳しく理解することなく、憧れだけでキャリアを捨てることは簡単にできない。
そのような時に、クリエイターや編集者が多いコミュニティに属し、プロジェクト単位で副業として、そしてなめらかに転職していく。社会全体が、不用なストレスをなくすために、緩やかに変化している時代だ。
コルクラボ のメンバーが、コミュニティ転職というテーマで、このようなブログを書いていて、非常に説得力があった。
実は、編集専科の構想は、長い期間あった。有名な編集者を呼んで講演会を連続してやると、面白いかもしれないけど、実は行動は変化しない。もっと体系化して、講義を受けた人にも再現性があるように編集という行為を分解しなくてはいけない。
コルクの元メンバーの柿内やコルクラボ の編集部のみんなと「編集とは何か?」ということをずっと議論してきた。そして、やっと自分なりに講義形式にできるというところまで、自分の編集経験を分解することができた。
3ヶ月前に始めたマンガ専科で、講義の課題をやる新人マンガ家たちが、毎月のようにバズる様子をみて、編集専科でもやれる、と自信が湧いてきたのも始める理由の一つだ。
編集という行為は、大きく分けると
「コンテンツの質を強くする」
「コンテクストを作る」
の二つだ。
そして、この二つをやるために「プロとしての素人目線」が必要になる。
いかにして「プロとして素人目線」を保ち続け、「コンテンツの質を強く」し、「コンテクストを作る」ことでなめらかに心に届けるかを講義にする。
今回は、その中の「コンテクストを作る」について、もう少し詳しく話す。
大前提として、人は自分にしか興味がない。
新しい恋人からのラインの返事は、世界中のコンテンツを凌駕する。空腹の人に、食事に勝てるコンテンツはない。
世の中にあるコンテンツは、作った制作者にとっては大事な子供のような存在だ。しかし、多くの人にとっては、どうでもいいものなのだ。クリエイターと接するとき、編集者は、それが命よりも重要なものだと理解して接さなくてはいけない。同時に、これは世間の人にとってはどうでもいいものだと思いながら、どうすれば自分ごとにしてもらえるのか?
運動会を例に考えてみよう。
あなたの家のすぐ近くの小学校で運動会が開催されるとする。あなたは独身で子供はいない。その場合、どんなに家の近所といっても、運動会というコンテンツに関心は持たないだろう。これがコンテキストが全くない状態で、あなたと運動会の関係は生まれない。
だが、結婚して子供が生まれたら、自分の子供が将来この運動会に出るかもしれないと思い、少しは運動会に興味を持つかもしれない。子供が運動会に出場する年齢まで成長したら、運動会には確実に行くだろう。
子供が生まれるというのは、受け手の環境の変化であり、コンテンツの発信者の工夫が関係ない。世の中にある多くのコンテンツが、受け手側にコンテクストが生まれることを待ってしまっている。運任せの体制だ。
もしその運動会で、地域に住む独身男女の交流を育むプログラムが企画され、そのことがチラシやFacebook広告で案内でされたら、参加するかもしれない。近くの幼稚園児が参加して、その保護者が学校見学もできるようになっていたら、参加する人が増えるかもしれない。
運動会を自分ごと化する人をどうのようにして増やしていくのか。受け手側の環境の変化を待つのではなく、コンテンツに工夫することによって、自分ごと化する人を増やす、それが「コンテクストを作る」という行為だ。
「ステークホルダーを増やす」という言い方をする方がイメージが湧くビジネスマンは多いかもしれない。商品、サービス、プロジェクト、会社が世の中に浸透するには、ステークホルダーを増やすことが重要で、コンテンツを世に届けると言う行為は、様々なビジネス的な行為と結局は一緒なのだ。
コンテンツが溢れてしまって、ますます他人にとってはどうでもよくなっている時代だからこそ、編集者は、コンテンツに対してステークホルダーになれる仕組みを散りばめることが必要で、その重要性は増してきている。
一方、その仕組みを考えるうえで最も難しいのは、ステークホルダーの質と規模のコントロールをすることだろう。
斬新な発想や大胆なアイデアは、4・5人の少人数からしか生まれないと言われている。最近の科学的な調査でも、その人数を超える集団からは、大胆な発想は出ないと証明されたそうだ。
そのため、コンテンツのステークホルダーを増やしたいからといって、初めから大人数に企画やアイデアづくりに関わってもらおうと思っても、大抵は上手くいかない。
はじめは、1人か2人でコンテンツの核を考える。次に4・5人でコア・アイデアをまとめる。そして、20人、100人、1000人とその輪を広げていく。そんな風に、巻き込み方を丁寧に設計していくことが編集者の役割になってきてる。
編集専科では、具体的にどのような工夫をして、実現したのかを伝えることで、他の人でも再現できるようになることを目指す。
そして、ここまで書いて、この僕のマガジンは、果たしてステークホルダーを増やす工夫をしているだろうか。自己矛盾のあるコンテンツではないか?と自省してしまった。有料課金という最も手抜きな形でしか、ステークホルダーを生み出せていない。
そこで、このnoteマガジン「週刊!編集者・佐渡島の『好きのおすそ分け」でも、読者の方々が、ステークホルダーになれる仕組みを散りばめていき、毎週アップデートしておくことを意識したい。
まずは、有料マガジンを購買してくれている方限定で、お悩み相談や、「こんなことをnoteに書いて欲しい」というリクエストを受け付けることにした。詳しくは、有料公開部分に記載するので、気軽に投稿してもらえたら。
更には、有料マガジン購買者限定で、オフ会も開催する。発信者と読者という距離のある関係から、一緒にこのブログを運営しているという関係へとなれたら嬉しい。
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