運命に抗う 『ある男』について
「運命」という言葉を検索すると、田山花袋の「運命に従うものを勇者という」言葉に出会った。
運命に従う人は確かに勇者だ。
『マトリックス』の主人公、トーマスは、ネオとしての運命を受け入れて、救世主として活躍する。
『寄生獣』のシンイチは、ミギーの存在を受け入れて、戦う。
運命として背負った重責を果たす人はかっこいい。
では、運命に抗う人はどうだろう?
『ガタカ』は、遺伝子操作を受けた適正者と、自然に生まれた不適正者が存在する社会だ。不適正者のヴィンセントは、適正者しかなれない宇宙飛行士になることを目指す。遺伝子という変えられない自分の運命に抗って。限りなく負け戦に近い敵に挑む姿も、またかっこいい。
運命に従う人、運命に抗う人、どちらが勇者と言えるだろう。
このことを『ある男』の打ち合わせを始める前に、平野さんと話し合った。「ハリウッドでは、10年おきくらいに、このヒーロー像が入れ替わっている」ことに平野さんが気づいたのだ。
平野さんは、「自由のこれから」という新書を書いた。
その中で、ビックデータによるレコメンド機能で、私たちが、選んでいるようにみえて、選ばされているだけの未来がやってくることを指摘している。果たして、これからの時代、私たちは、自由意志を持てるのか?
そのようなことをそもそも議論していたから、運命に抗い、自由意志で生きようとする男として、ある男=Xが生まれた。
同時に、里枝は、息子の死という運命を受け入れた女性だ。城戸も、3勝4敗主義という思想を持ち、運命を受け入れたともいえる。
運命に抗うことと、受け入れること、どちらが勇者なのか?そのことは、『ある男』の大きなテーマの一つだ。
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