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「あいまい」のススメ

多くの人は絶対の中で、生きようとしている。絶対を持つと見かけの強さを手に入れられるからだ。

宗教が長い時代、「絶対」の役割を果たしていた。そして、宗教の力が弱まり、今までは社会の「スタンダード」が大衆の絶対になっていた。

しかし、その「スタンダード」も「ダイバーシティ(多様性)」を重視する社会へと変化する中で「絶対」の座を陥落した。

他者の自分と違う価値観は、自分の中の絶対を揺るがす。だから、他者へ指摘しないといけない。「あなたは間違っていますよ」相手が間違っていなければ、自分が間違っていることになる。社会を良くするために、間違いをたださないといけない。

絶対の中に生きている人は、他人の間違いをただす。これは、昔からの習性なのだと思う。聖書の中に「あなたがたの中で罪のない者が、まずこの女に石を投げつけるがよい」という言葉がある。人類はずっと自分の絶対と違う人に石を投げつけてきた。

誹謗中傷とは、何か?

誹謗中傷がいけないという意見は、社会全体が賛成する。している側は、間違いをただす、正当な批判をしていると思っている。受け取る側は、自分の価値観を攻撃されていると思って、誹謗中傷と感じる。誹謗中傷をした多くの人は、自分がしたことが誹謗中傷に当たっていると自覚すらしていない。だから、どれだけ誹謗中傷が良くないかを社会が指摘してもなくならない。誹謗中傷とは、自分の絶対を他者にも強要して、社会を良くしようとする行為だ。している人は、正義という名の下で行なっているから、自分の行為を攻撃だとは思っていない。

スタンダードの社会では、絶対がある人が「強い」人だった。しかし、ダイバーシティの社会では、絶対は心理的柔軟性のなさを示す。絶対がないことが強さである社会へと変わっていこうとしている。

先日、若新さん、手塚マキさんと鼎談を行なった。その時は判断保留という言葉が出てきていた。

この鼎談で若新さんと仲良くなり、後日二人で話している時に、若新さんにある質問をされた。

「絶対の反対って何だと思いますか?」

絶対の反対というと、「相対」を思い浮かべる人が多いと思う。絶対評価と相対評価のように、相対は絶対の対義語として使われている。

だが、若新さんは絶対の反対は「あいまい」だと言う。

アナログ時代は、情報の処理量が少なかった。だから、スタンダードを絶対として大切にし、それ以外のものを切り捨てていた。

デジタル時代になって、可能な情報処理量が増えた。ネット上に無限のコミュニティが生まれ、様々な価値観や生き方をしている人たちの居場所が生まれた。ネットによって多様性が担保された結果、社会的マイノリティと呼ばれる人々も発言できるようになった。LGBTが受容されるようになったことが象徴的だ。今までの価値観だと、その「あいまい」さが許容されていなかった。

「A or B」の二項対立的思考ではなく、「A and B」であいまいなまま、前に進むことこそが今の時代に求められている。あいまいなままで「いる」ことも他者の「あいまいさ」を受け入れることもどちらもしなやかさを必要とする。

この「絶対」と「あいまい」を考える中で、僕は「宇宙兄弟」の中の重要なエピソードのことを思い出さずにはいられない。

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「絶対」を持っていたヒビトはパニック障害になり、宇宙飛行士でいることができなくなる。しかし、NASAの宇宙飛行士という立場をすて、ロシアで生活するという何者でもない「あいまい」な状態を受け入れる中で、ヒビトは宇宙飛行士として復活する。「あいまい」という強さをヒビトは手に入れたのだ。

この「あいまい」という概念、若新さんともっと議論して、深掘りをしてみようと思っている。そして、僕は「あいまい」な強さを身につけたいと望み、ハッとする。

僕の名前の「庸平」は「中庸」から取っている。

中庸とは、儒教用語で、かたよることのない「中」をもって道をなすという意味だ。極端でなく、バランスをとりながら、物事の真理を考えていってほしいという願いから、「庸平」になった。

奇しくも、僕が大事だと思っていることが、自分の名前に込められていた。不惑の年、40歳にして、やっと両親が僕の名前に込めた願いと僕は向き合うことになったのだ。

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コメント (2)
朝から素敵な文章が読めて、幸せな気持ちになりました。
自分の名前に込められた願いに気づく。本当に大切なことは遅れてやってくるんですね。
3つ違う視点の同じ内容の記事を読んだことで絶対や曖昧に対する気づきが深くなりました。3つ読ませていただきありがとうございます。
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