第七章 高等遊民的な生き方へ
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第七章 高等遊民的な生き方へ

僕たちは生きている中で自分の言葉が相手に通じない経験をたくさんする。それはそこに「ズレ」があるからだ。しかし、ズレに気づきながらも、それを深堀りすることはほとんどない。僕はそのズレは、世の中をみる解像度が違うことで生じると思っていた。でもそうではなかった。

細谷さんの『具体と抽象』を読んで、通じなさを生むのは、解像度ではなく抽象度だと気づいた。
今回、細谷さんと対談を通して「ズレ」についての深堀りを沢山した。
その内容が『言葉のズレと共感幻想』という本になって年内に出版される。
僕のブログで1章ずつ先出し公開中。

才能のシェアリング・エコノミー

佐渡島 モノをなんでも「所有する」という考え方が薄れてきて、シェアリング・エコノミーの認知度が高まっています。メルカリは、ブックオフのような中古市場のDX化というよりも、シェアリング・エコノミーの牽引者ですよね。
 20代の人と話していると、買い物をする前に、メルカリでの値段を調べてからという人がいます。自分が使った後に、「シェアできないものは買わない」という価値観が世間に広まりつつある。
シャアリングエコノミーの概念は具体的なものに限定せずに広がっていると思います。副業に対する社会の価値観も変化している。これからの時代の副業は、給与の引き下げ分を補填するというような位置付けではなくて、才能のシェアリング・エコノミーと捉えた方が変化が理解できるかなと。
 さまざまな事情で社員の優れた才能をうまく活用できていないということは、どこの会社にもありますよね。逆に自分の才能を存分に発揮できている人でも、それ以外の分野でも才能を育てていきたいと思うこともある。その概念的な部分に対して、シェアリング・エコノミーが起きていくとどうなるか。
 本の著者というのは基本的には一人ですよね。共著者が何人もいたら著作権を細かく分けることになって、面倒だし実入りにもなりません。でもマンガの世界でいうと、マンガ家の中には、物語の出だしを考えるのがうまい人、引きを作るのがうまい人、セリフを小粋にリズムよく整えるのがうまい人というように、万能ではないけれど特定の部分において優れた技量をもっているという人がけっこういるはずで、その人たちがうまく協力しあって一つの作品を作ったら、一人一人が同時にたくさんの作品に関われると思うんです。セリフが得意な人はセリフを整えることだけをやるということも可能なはずです。今までは、そのような部分的な技術を統合することの手間の方が大きかったけど、ネット上でマッチングが可能になると、協力もしやすくなる。
 著作権料、つまり富の分配が、銀行口座を通す方式だったらこの方法は複雑すぎて、現実的ではない。けれど、ブロックチェーンなどで、アイディアの使われ方を捕捉できて、富の分配を行うことも可能になるかなと。どんどんいろんなものがシェアされていく。ウーバーは、車。Airbnbも、空間のシェアです。クラウドワークも、才能のシェアリングエコノミーと言えますよね。これから会社のあり方は相当変わると思っています。
 ただ、「会社はもうオワコンだ」という極端な考えにはまだいってないです。コルクは、もうオフィスもなくして、リモートワーク中心ですが、やはり法人という概念に集っているから生まれるパワーというのがあるという気がしています。

細谷 富の再分配の概念から抜本的に変えることとセットでやらないといけないでしょうね。本の分業の話でいえば、富の配分のために作品への貢献度を定量化しなければならないけれど、それはほぼ不可能でしょう。自分なりの貢献がある思う人が多いでしょうから。その点を抜本的に違う仕組みにできれば、実現する話だと思います。
 結局、会社のような組織は、内部でやるのと外注するのとどちらのメリットが大きいかでその最適のサイズが決まるということだと思いますが、そのサイズがテクノロジーの発展や付加価値のモノ→コト化などによって小さくなってきていると思います。

佐渡島 この本を作るのに細谷さんとこうして話していますが、僕にしろ細谷さんにしろ、これは本業ではない。でも、いい加減にやっているのかという本気でもある。今やネットによって、どこにいても自由に働けるようになってきて、何が本業とか、中心を決める必要がない。中心がなくて、複数の拠り所があると、自由に発想できる。「この内容ではマーケティング的に一般のサラリーマンにはピンとこないんじゃないか」なんて気にする必要がなく、自分たちの発想を広げることに集中できる。結果、細谷さんとお会いしている今この時間を楽しむことに集中できる。
 ギリシア時代の人たちは、奴隷がいたから自由にできた。僕たちは、テクノロジーによって、高等遊民のような生き方ができるようになってきている。でも、価値観の変化がそれに追いついていないように感じます。

細谷 そういう振る舞いになれば、本の分業の話は十分に実現可能ですね。自分の作品への貢献度など気にせずに、作品の制作に専念できる。貢献度は、自分で勝手に八〇パーセントだとか思っていればいいだけの話で。全員足して八〇〇パーセントでもいいんですから。

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第七章 高等遊民的な生き方へ

佐渡島庸平(コルク代表)

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佐渡島庸平(コルク代表)

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コルク代表・佐渡島のnoteアカウントです。noteマガジン『コルク佐渡島の好きのおすそ分け』、noteサークル『コルク佐渡島の文学を語ろう』をやってます。編集者・経営者として感じる日々の気づきや、文学作品の味わい方などを記事にしています。