反応しない、判断しない。『LISTEN』を読んで、改めて感じたこと
編集者とは、作家の話を聞く仕事でもあり、話を聞き出す仕事でもある。
聞くを意味する言葉には、”hearing”と”listening”がある。hearは自然に聞こえてくるといった受動的な意味合い、listeningは意識して耳を傾けるといった能動的な意味合いで使われる。
編集者として求められるのは”listening”としての「聞く」であり、相手の頭と心の中で何が起きているのかを主体的にわかろうとする「聞く」だ。
ぼくは、聞く力を高めたいと思って、コーチングについて学んだり様々なことをしてきた。NewPicksの番組でMCを担当したのも、MCとは出演者から話を聞き出す役割なので、番組を通じて自分を鍛えられるのではないかと思ってからだ。
そして、「聞く」への学びを深めるのに、いい本と出会った。『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』という本だ。
プレゼンのプロやしゃべりの達人に、誰もがなろうとする必要はない。それよりも、「聞く力」を身につけるほうが圧倒的に大切だと、この本は主張している。
話を聞くということは、自分では考えもつかない新しい知識を連れてくる。また、話をじっくり聞ける人間は信頼され、特別な人間関係を育むことできる。聞くとは、人生を豊かにする道なのだ。
一方で、多くの人は聞いているようで、実際は聞くことができていないと、著者はいう。
聞くうえで一番重要なこと。
それは、相手の感情に寄り添うことだ。
人は感情に支配されており、冷静な論理よりも、嫉妬やプライド、恥、欲、恐れ、虚栄心に突き動かされて行動する方が多い。うわべの言葉だけで判断せず、言葉の奥にある感情に耳を傾けることが必要となる。
だが、多くの人は先入観によって、誤った判断をしてしまう。自分の物差しで判断してしまい、相手の感情に寄り添うことができない。本では、いかに多くの人が先入観を持っているかが書かれていて、どんな人でもバイアスからは自由になれないことがよくわかる。
では、バイアスから逃れられないなかで、どうすれば相手の感情に寄り添えるのか。
答えは、判断保留の態度で接すること。
相手の言葉に、すぐに反応しないこと。表面的な言葉だけを見て、判断をくださないこと。一呼吸を入れて、相手が本当は何を伝えたいのか、どんな気持ちなのかを、考えてみること。言葉になっていないところにこそ、耳をすませることが大事だと、本には書かれている。
ぼくの新刊となる『観察力の鍛え方』にも、判断保留の態度で接することが、多くの人が見落としてしまっている美しさやおもしろさに気づき、人生を豊かにすると書いている。
「観る」と「聞く」でアプローチは違うが、『LISTEN』に書かれている内容は、根本のところでシンクロする部分が大きいと感じた。
いま、SNSを眺めていると、バイアスによる罵りあいが目についてしまう。
でも、自分と異なる意見や理解できないものと出会った時こそ、判断保留の態度で、言葉の奥にあるものを察していきたいと、ぼくは思う。
『LISTEN』の内容を、ひとつ紹介する。
"実は私たちは、自分の信念に確信を持つには、異なる意見をぶつけてもらう必要があります。自信のある人は、自分と違う意見に怒ったりはしませんし、反論するためにオンラインでかんしゃくを起こしたりもしません。
心に余裕がある人は、相手をひとりの人間として知ることもなしに「救いがたいほどのバカだ」とか「悪意を持っている」などと決めつけることはありません。"
ぼくが考えていることが、まさに書かれていると感じた。
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