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仲間を見つけた!

「人はなぜ生きるのだろう?」

幼少時代から、僕は何度も自分にそう問いかけた。

当たり前だけど、自分の中に答えはなく、僕は答えを本の中に追い求めた。本の中には、僕と同じ問いかけをしている人たちがたくさんいた。

そういう問いかけを、本の中だけでなく、作者に直接できたら何て楽しいだろう。出版社に入社した時、僕はそんな風に考えていた。その気持ちは、コルクを起業した今も変わっていない。

講談社の先輩の三枝をコルクに誘ったのも、彼が僕と同じような問いかけをしながら、本を読んでいると感じたからだった。

三枝と僕は編集者だ。作家のサポートは、今までの経験でできる。でも、僕らがこれからやらなければならないのは、エンタテインメント業界のビジネスモデルを変えることだ。

アナログ時代ではなく、IT時代にふさわしい、クリエイターをサポートするビジネスモデルを構築したいという願いは、日に日に強くなっている。

そのために足りないのは、経営ができて、未来のビジネスモデルを想像できる人間だ。作家を尊敬し、僕らと夢を共有し、僕らと同じだけの覚悟とチャレンジスピリットを持っている人を、ずっと探していた。

そしてついに、仲間が見つかった。

寺田悠馬という人物だ。コルクの経営をサポートしてくれる。

彼は今までずっと金融業界にいた。僕や三枝とは、バックグランドが全く違う。

でも、僕も三枝も彼と話して10分もしないうちに魅了され、コルクにぜひ来てほしいと本気で口説いた。

なぜ、彼に魅了されたのだろう?

きっと、彼が僕らと同じように「人はなぜ生きるのだろう?」という問いを繰り返し、答えを探していたから。

僕はそのような問いを持った時、人は誰しも、本へとたどり着くのだと思っていた。

しかし、寺田は、お金を通して世界を見つめて、答えを探していた。その方法は、僕には思いつかないものだったけど、彼の話には説得力があった。

僕らは、こんなにクレバーな人物に会ったことがなかった。

              東京ユートピア

寺田が執筆した『東京ユートピア』という本を読んで、僕の直感は正しい、おなじ未来を想像していると確信した。

そのうえ彼は、クリエイターを、まるで自分の命のように大切に思うことができる、滅多にいない人物だった。クリエイターを尊敬している人と、クリエイターを利用したいと思っている人を、僕らは簡単に見分けることができる。

こんな出会いに興奮しないわけにはいかない。

ベンチャーを経営するって、どんな感じなのか?

作家・平野啓一郎さんの紹介で知り合った、ライフネット生命の岩瀬大輔さんはこう言った。

「まるでロールプレイングゲームの主人公になったような感じですよ。仲間を探して、見つけて、冒険する。すごく楽しいですよ」

その話を聞いた時の僕はまだ講談社に在籍していて、退職するまで残り数週間。岩瀬さんの言う“楽しさ”は、正直イメージが湧かなかった。

多くの人に、資金繰りとか、採用とか、細かいことを一杯やらないといけなくて、編集者としてのクリエイティビティが失われるよ、と心配されていたし、経験がないなかで、やはり不安はあった。

でも僕は寺田に出会い、岩瀬さんの言葉の意味を心底、実感した。

その喜びを小山さんに話したら、なんと小山さんはそれを宇宙兄弟のエピソードの参考にしてくれた。宇宙兄弟のストーリーの展開と、僕が経験していることが、同じようなタイミングだったのは全くの偶然だけど、嬉しい偶然だった。

小山宙哉とそのような形で共有できたことで、僕の嬉しさは何十倍にもなった。

そして、小山宙哉は、僕の感情を僕よりもずっとうまく言語化した。まさに、「宇宙兄弟」の「#213 Piece(ピース)」に描かれていることは、僕が感じたことだった。

(モーニングにはすでに掲載されましたが、単行本では2013年10月23日に発売される22巻に収録となります。先の話をチラリとも知りたくない人は、下記を読むのは控えてくださいね)

           「宇宙兄弟」 #213 Piece(ピース)

「こんな人に出会いたい」と——

まさにイメージしていた通りの人たちだ

ジグソーパズルのピースがはまるようにピッタリと収まった

「本当に必要な人というのは

きっと向こうもこちらを必要としている——-」

そんな人に出会いたい

会う人会う人に誰かを紹介してもらえるようお願いしておいたのが良かった

彼に出会うことができたから

同じ志を持つ仲間を見つける。そのことが、こんなにも仕事を楽しくしてくれるなんて、想像もしていなかった。

年内に、さらにもう一人、強力な仲間が合流してくれる予定だ。

僕は最高にわくわくしている。

今から、コルクの本当の冒険が始まるんだ。

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