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「期待」と「メタ」が、物語を面白くする

スポーツの試合を面白く見る方法がある。

賭けをするのだ。

賭けたチームが、悔しくもあと少しのところで負け続けていて、もう諦めていた最後の最後の本当にギリギリの時に逆転勝ちをすれば、その試合の観戦は最高に面白くなる。賭け金がおおきくなればなっただけ、ヒリヒリ、ドキドキが増えて、面白さが増す。

この状況を要素分解すると、面白くなるために必要なことがわかる。

「期待」と「メタ」だ。

どちらが勝つか、賭けをすることで期待が生まれる。その期待が裏切られ続け、最後にいい方に裏切られると、面白くなる。

いい物語は、期待を醸成し、それを裏切り、次はいい方向に裏切る、というシンプルな構造をしている。ただスポーツの試合があるだけだと、期待が生まれない。贔屓の選手やチームがある方が、観戦が面白くなるのは、期待を生み出してくれるからだ。

「期待」とは、「参加」のもっともハードルの低いバージョンだ。

次に、お金を賭けると、試合がよりメタ的になる。勝つか負けるかで、自分も影響を受ける。「期待」よりも参加度が高くなっている。

スポーツの試合は、試合だけは面白くならない。それを観戦する人たちが、心理的にどれだけ参加するかが重要だ。

このスポーツの試合を、人生に置き換えても全く同じことが言える。人生、そのものが面白いということはない。そこに、参加しないと面白くならない。

どうすれば自分の人生に「期待」できるのか。それの一つの方法が仮説をたてるだ。仮説が正しいのか検証しながら検証する作業は、ドキドキして楽しい。

そして、お金を賭けるという行為は、起業するということだ。

実は、物語作りで学んだ面白くする方法を人生に当てはめると、起業して挑戦することに帰結する。

多くの人は、人生は自分の手の中にあると思っているが、意識しないと、自分の人生に参加していないこともありえる。起業は、人生を自分ごとかする方法とも言える。

こんなことを改めて考えるきっかけは、コルクラボのメンバーが開催してくれた、僕の誕生日を祝う会だった。

普通の誕生日会とは全く違う。

1年前に、ラボのメンバーが、「佐渡島庸平殺人事件をやりたい。佐渡島さんが、何気なく発した言葉で傷ついた人たちが容疑者。その人たちへの取り調べを通して、僕の思想が、見ている人たちに伝わる劇をやる、誕生日会をやってもいいか?」と聞いてきた。

全く想像がつかないけど、もしも実現できたら、面白そうだ。発案者は、忙しくてあまりに関われなくなったのだけど、そのアイディアを引き継いだラボのメンバーが、1年間、あーでもない、こーでもないと考え、SCRAPのウォーリーに相談したりして,完成した。

出来上がった設定は、僕が容疑者。僕は部屋に数時間閉じ込められて、6チームから様々な取り調べを受ける。その様子は撮影されていて、ラボのみんなは別室で見ている。

取り調べの時に、3つのカードがある。そこには、僕に事前に質問した答えが書いてある。でも、一つだけ嘘だ。僕はすべて本当だと主張する。僕の嘘を見抜けるかをみんなは、映像で楽しむ。

そして、取り調べをしている人は、宇宙兄弟にでてくる「グリーンカード」が渡せされる。取り調べの途中に、急に変な行動をするのだ。映像を見ているみんなは、僕の答えだけでなく、いつそのグリーンカードをみんながやるのか、それに僕がどう反応するのかも期待しながら映像をみる。僕が話してるところを見るだけではない。物語に参加できる仕組みが、複数用意されている。

僕の誕生日会という名目で、アドリブの参加型の劇が行われた。この劇を企画したのは、誰もクリエイティブな仕事を生業にしていない。SCRAPのウォーリーの協力をあおいだけれども、脱出ゲームではなく、アドリブ劇だった。偶然、素人たちによって、エンタメが更新された。

これからは、どんどんエンタメが参加型になっていく。その更新は、素人によって起こされていく。僕の誕生日会という名目で、すごいものに立ち会ったと思った。

僕は物語をどうやったら面白くできるかを考えている。だから、そのヒントを誕生日会という形でもらえたことが嬉しかった。


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佐渡島庸平(コルク代表)

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2002年に講談社に入社し、週刊モーニング編集部に所属。『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)などの編集を担当する。2012年に講談社を退社し、作家のエージェント会社、コルクを設立。
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