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みんな最後は「線」の話をする

 シンプルなことが、一番難しい。

 僕はゴルフが大好きなのだけど、先日、池田勇太のドキュメンタリーを見た。特別なことをしているのかと思いきや、歩き方のトレーニングをしていた。歩くって誰もが当たり前のようにしていることだけど、いい歩き方となると途端に難しくなる。誰もがやっている当たり前のことを、誰もがやれないようなレベルでやるのが一流なのだろう。特別なことができるのは、一流の一歩手前。

 一流のマンガ家は、誰もが皆、最後は線の話をするようになる。

 初めは、かっこいいキャラクターをどうやったら描けるかを考える。次は、キャラクターをどうやって描き分ければいいのか。その次は、色々な表情をどうやって描くのか。そして、手をどうやって巧く描くのか、上からみた人の描き方、靴の描き方と細部を悩む。そして、結局は、線に悩む。味のある、魅力的な線をどうやって描くのか? とにかくシンプルに線のことだけを考えるようになる。

 安野モヨコとはよく線の話になるのだけど、良い線とは何かを僕は詳しく理解できていないから、いい話相手になることができない。安野さんは、ちょっとでも絵がうまくなるために、水墨画や日本画の練習をしていた。それだけではない。ヨガやボイストレーニングも、すべて絵のためだとこの前知ってびっくりした。てっきり健康のためだと思っていたけど、いい線を描くためには体のバランスが重要でヨガを始めていた。線のために、呼吸もやっぱり大事で、いい呼吸法を知るためにボイストレーニングに興味を持ったのだという。「いいマンガを描きたい!」安野モヨコの中にあるその欲望の強さを改めて感じる話だった。

 シンプルなことは、「わかってる」つもりになりやすい。僕はいい経営者になりたいと強く思っている。そのためには、知識も勇気も行動力も色んなものが必要だ。しかし、全部を同時に求めるのは無理だ。もっとも重要なのは何か?

 いい眠り、というのが僕の最近の答えだ。

 結局、僕一人の力など知れている。楽しそうに笑っていて、周りが気持ちよく働ける空気を作り出していないと、僕は何も成し遂げることができない。楽しそうに笑うには、よく休んでいないといけない。しかし、よく休むために、うまく寝ようと思うと、意外とそれが難しい。悩みはつきず、寝るギリギリまで考えてしまうし、寝ていてもやり残した仕事が気になって目が覚める。たかが眠ること。そんな当たり前のことがすごく難しい。

 一つの行動を変えると、次々と変化が起きるようなドミノの一枚目を僕はいつも探していた。特別なことを発見しないといけないと思っていたのだけれども、すごくシンプルなこと、いい眠りがドミノの一枚目になりえる。複雑な事象が重なったように感じる成功も、シンプルな行為の積み重ねでしかなく、日常を大切にした人のもとに訪れるのだ。


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佐渡島庸平/コルク代表

2002年に講談社に入社し、週刊モーニング編集部に所属。『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)などの編集を担当する。2012年に講談社を退社し、作家のエージェント会社、コルクを設立。

コルク佐渡島、note加藤のコンテンツ会議

コルク代表・佐渡島庸平、noteやcakesの運営会社ピースオブケイクの代表・加藤貞顕が、その週にふれたコンテンツについて書いていきます。毎週水曜日更新(予定)!

コメント2件

初めまして。大学4年生の者です。

昨年11月に放送された、「10代 VS. プロフェッショナル 弟子入りスペシャル」を見て感動して以来、佐渡島さんのtwitterや著作などを拝見しております。

こちらのブログの存在は最近知ったのですが、非常に勉強になります。いつもありがとうございます。

ぼくも人生のどこかのタイミングで「いい経営者」になりたいと思っています。その為に一番大事なことは今の所は求心力だと考えていますが、いい眠りというのも面白いなと思いました。

いつか自分が膨大な仕事を抱える時が来たらきっと眠れないだろうなと想像した事があるのですが、よく眠るためのコツは「無責任になること」なのかな、と思っています。
本田圭佑選手が2014年のワールドカップ行きがかかったPKを決めた後、インタビューで「外したら外したでしゃーないかと思った」と言ったのを見て、「そういう精神状態の方が良い結果を出せるのかもなぁ」と思ったのです。

こんな事を学生が申し上げるのは生意気かもしれませんが、適度に力を抜きながら、今後とも挑戦し続けていってください。

失礼致しました。
漫画家にとっての「線」は、音楽家である私にとっての「音」だと感じています。かつて日本画家の知人が「良い線は情報量の多い線」と言っておりました。私はその言葉を聞いたときに、中学の最初の数学の授業で「線とは点の集合体(あやふやですが)」と教わったことを思い出しました。これが私にとっての「ドミノの一枚目」です。大切なことは義務教育(基礎)のなかに潜んでいたのか!という「してやられた感」。点を打つように線を描くこと、楽器を響かせるように音を奏でること、基本中の基本なのに、それが一番難しく、面白い。どの世界も同じですね。
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