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「ありがとう」を言わないチーム作り

僕はチームでプロジェクトを行なっている時に「ありがとう」と言われるのが好きじゃない。「ありがとう」というのも好きじゃやない。

プロ意識が足りなく感じるのだ。各自が、自分の持ち場で、自分の強みを発揮した。相手のためだけにやったわけではないので、「ありがとう」という言葉が発せられると、その思いが違ったものになってしまうと感じる。

自分の理由で動くと自由。他人の理由で動くと他由。自由で動いている人に「ありがとう」はいらない。「ありがとう」が必要なのは、他由の時だ。

そんな話をしていると、それって『スラムダンク』の湘北ですね、と教えてもらった。

確かに。

山王工業との試合の終盤。キャプテンの赤木は、「最強」と呼ばれる相手に一歩も怯まないメンバーを誇らしく思い、つい心の声を漏らしてしまう。

”オレたちゃ別に仲良しじゃねえし、お前らには腹が立ってばかり。だが…、ありがとよ…”

その一言に対する、チームメイトである桜木や流川たちの返事がいい。

「バカヤロウ!オレは自分のためにやってんだ!」
「てめーのためじゃねえ!」
「そう!自分のため!」
「自分の勝利のためだ!」
「何がありとうでい!」

僕の記憶の中に、このシーンが、強烈に残っていた。『スラムダンク』を読んで、「ありがとう」って言わないほうがかっこいい、こうなりたいという価値観が僕に埋め込まれたのだった。でも、価値観だけが残り、そのきっかけを忘れていた。

自分はなぜこんなややこしい考え方をしているのだろう。素直に「ありがとう」と言いまくる方が、摩擦を起こさないのにとずっと気になっていた。今回、僕が「ありがとう」を言うのが、かっこよくないと思っている原体験が明らかになり、かなりすっきりした。

チームビルディングにおいて、「タックマンモデル」という4つの成長段階を経て成果が出せる状態になることを示したフレームワークがある。

【1】形成期(フォーミング):
チームが結成されたばかり。互いのことも、何をするかもよくわかっていない。
2】混乱期(ストーミング):
各メンバーの本音の意見が場に出る。ぶつかりあう。
【3】統一期(ノーミング):
役割とルールが明確になり、自分たちの目的・目標を設定する。
【4】機能期(パフォーミング):
チームとしての能力が発揮され、高い成果が生まれる。

「ありがとう」を言葉にしないと、ギクシャクしてしまう関係性であるのは、そのチームがフォーミングにいることを意味する。まさに、コミュニケーションでやり取りされる内容ではなく、挨拶、お礼というフォームが重視されている。

タックマンモデルの重要な点のひとつが、本音でぶつかりあう「ストーミング」だ。相手に文句を言うことではない。自由と自由をぶつかり合わせ、お互いの自由が担保される場所を見つける作業だ。

チームの理由が自分の理由と繋がっていれば、「ありがとう」がなくてもモチベーションは下がらない。「ありがとう」が目的で行動しているときは、個人間の関係性を築こうとしている。同じゴールを向いていない。

同じように、「ごめんなさい」も言わなくていいと思っている。

うまくいかなかった時に、「ごめんなさい」と謝られると、僕のためにやってもらっているのかと感じる。そうではなくて、共通の目標を成し遂げるために、チームを組んでいる。僕に謝る必要はない。それよりも、悔しさを共有したい。

『宇宙兄弟』で、こんなシャロンの言葉がある。

個人の願いが集まって・・・”みんなの夢”って呼べるようになったら、それはきっと叶うわ。

この言葉は、まさに、いいチームに起きること端的に言い表している。

「ありがとう」も「ごめん」も不要なチームを作り上げたい。

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