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コルクとトルク

9月29日の23:15、もしかしたら事件が起こるかもしれない。ひとりの男がTBS『情熱大陸』に登場する。彼は言う。「この番組内で新しいテレビのかたちを提案する」と。いま、僕がもっとも頻繁に顔を合わせ、彼のエージェント業務を引き受けることになったクリエイター、AR三兄弟の川田十夢だ。

情熱大陸 番組予告(9月29日放送予定)http://youtu.be/HHKY41rpwSA

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「偉人と同時代に生きていて、もし出会えたらどうするだろう?」

歴史小説などを読むと、そんな仮定が頭をよぎる。

AR三兄弟の川田十夢と初めて出会った後、僕はこんな風に考えた。

「エジソンに出会ったら、きっと今の僕のような気分だ。エジソンと話して、未来の姿を想像した人は、今の僕みたいに興奮したんじゃないか。川田十夢は、現代のエジソンだ」

川田十夢との出会いは、それぐらい強烈だった。コルクの創業準備をしている時に、何となく面白そうだな、それぐらいの気持ちで川田十夢が現代アーティストの鈴木康広と対談するイベントを見にいった。

そうしたら、すっかり魅了されてしまった。

コルクは、作家のエージェント会社と名乗るつもりだったが、川田さんと出会って考えが変わり、クリエイターのエージェント会社と名乗ることにした。

                                        AR三兄弟の企画書

何がそんなに強烈だったのか?

川田さんと話したことがある人か『AR三兄弟の企画書』という本を読んだ人なら分かってもらえると思うのだが、時々、川田さんが言っている言葉の意味が全然分からない。日本語を使っていて難しい単語を使っているわけでもない。でも、何を言っているのかが頭に入ってこない。それでも、記憶に残る言葉遣いだから、その言葉について考える。すると、2、3週間後に、特に理由があるわけでもなく、急に川田さんの言葉の意味が分かってすごく興奮する。川田さんの言葉を理解すると、目の前の世界のあり方が変わるのだ。

川田さんのことをもっともっと知りたくなる。

9月29日の夜11:15からの「情熱大陸」を見ると僕の言っていることを、ちょっとは理解してもらえるかもしれない。

情熱大陸の予告の中で、風鈴もARだと言っている。風鈴=ARって、一体どういう意味なのか? 全く分からない。でも、その言葉の意味が分かると、風鈴の音を今までと同じように聞かなくなる。

作家の人が何を考えているかもっと知りたい!という要求が湧いてくると、それを知るために新作を編集したい!と僕は思う。川田さんの場合は、どうすればいいのか?

はっきりとした答えもないまま、とにかくエージェントになって川田さんが仕事をするサポートをしたい、そうすれば川田さんのことがもっとよくわかるはずだ。そう考えて、AR三兄弟のエージェントをコルクにやらせて欲しいと川田さんにお願いをした。創業時からお願いをしつづけ、そしてつくった会社が「トルク」である。

川田さんのことをよく知るために、僕自身が2度、川田さんのインタビューを企画している。内容は変えていて、2度とも、cakesに掲載してある。

1度目「十の夢」は有料会員しか読めないもので、

2度目「未来はすでにここにある」は無料で誰でも読めるものだ。

その中で、川田さんは「昔だったらSF作家になっていた。でも、今の時代、SF作家は、小説を書くのではなく、プログラムを描かなくてはいけない。未来は想像するのではなく、実現できるのだから」ということを言っている。

その発言を聞いて、僕は腑に落ちた。

僕は作家の人の頭の中に広がる世界を現実で見たくて、作家をサポートする。作家の場合は、頭の中を表現する最適な手段が、たまたまマンガや小説なだけである。僕の興味は「本」ではなく、作家の頭の中だったから、出版社という本にこだわる業種から離れてて、エージェントという業種を選んだのだ。

川田十夢の頭の中にあることを実現するために、僕はサポートする。はじめは自分でもうまくできるだろうかと半信半疑のところもあったが、作家のサポートの仕方と本質的には何も変わらないと分かって、僕が関わった方が川田さんのためにもなるのだ、という一種傲慢な自信も生まれてきた。

当初は、コルクの作家と同じく契約して、8人目のクリエイターとなるはずだった。でも、もっとビジネスのあり方を突き詰めると、作家とはサポートの仕方がずいぶん違うことがわかってきた。それで、別会社をつくった。

川田さんの創るものは、一瞬でわかる面白さとバカらしさを持っている。そのバカらしさばかりに目がいってしまうが、一歩引いて、川田さんの作り上げたものを見ると、その裏には世間を変えてしまうような仕組みが潜んでいる。川田さんは、そのことをアピールしたりしないけど、しっかりと未来のビジネスのことまで見通して、バカらしいものを作り上げている。

川田さんが生み出すもの、それは、「未来のメディア」だ。

テレビ、ラジオ、新聞、雑誌に替わるものを、生み出していくのではないかと、僕は思っている。

トルクという社名は、川田さんが考えてくれた。

トルクとは、固定された軸の周りで働く力のことである。

既存のメディアの力がどんどんと弱まり、今、既存のメディアで発表された作品は、遠くまで届かなくなってしまった。

トルクは、コルクで生まれた作品やそれ以外の様々な作品を、トルクの力で遠くへ届け、拡散させる。社名には、そんな思いが込められている。

会社のロゴは、またもやgood design companyの水野学さんがデザインしてくれた。シンプルの極みであるこのロゴは、未来をあける扉のドアノブのようでもある。川田さんにかかれば、どんな物も扉になり、未来への入り口となってしまうのだ。

川田さんが創る作品は、作品そのものではなく、作品を多くの人へ、楽しい形で届ける仕組みだ。今や電球を見ると、誰もが当たり前の日用品だと思って作品とは思わない。でも、エジソンの時代には、それは発明品だった。

川田さんが作り出すものは、その存在を実際に見て、使ってみないと全く、想像がわかないと思う。僕もこれだけ言葉を重ねても、川田さんのことをうまく伝えれた自信がない。

まずは、9月29日の情熱大陸を見てほしい。

そして、川田十夢が未来を生み出すと感じた人は、トルクと一緒に仕事をしよう。

佐渡島が編集に携わるマンガレビューサイト、マンガHONZはこちらhttp://honz.jp/manga

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