メタバース上の「NFTアバター」制作を、コルクがやる理由
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メタバース上の「NFTアバター」制作を、コルクがやる理由

佐渡島庸平(コルク代表)

学校教育などで「人の気持ちを考えなさい」とよく言われる。でも、想像力だけでできることには限界がある。「百聞は一見に如かず」ということわざがあるが、知識として頭で理解することはできても、体験したことのない感情への共感は難しい。

ぼくは、自分とは別の人の感情を体験できる唯一の手段が、「物語を読む」ことだと考えてきた。

作家は自らが経験した痛みや苦しみといった感情や、「こういう生き方をしたい」「こういう人になりたい」といった願望など、様々な感情を物語で描く。ぼくらは物語を通じて、自分の人生では味わったことのない感情を経験する。ある種、物語は感情と出会うための装置とも言える。

物語によって知らない感情を認知することで、それ以前と比べて、他人の気持ちを推し量れるようになる。また、登場人物に自分を重ねることで、「こういう感情を自分も味わいたい」「こういう喜びに触れたい」と、なりたい自分を見つける。

物語は、読者の世界を変える力を持っている。

こうした考えから、コルクでは「物語の力で、一人一人の世界を変える」を会社のミッションとして掲げてきた。

そのコルクの新規事業として、メタバース上で使用できる「NFTアバター」を制作販売する『METABA』が、2022年1月1日から開始する。

METABAでは、『The Sandbox』『VR CHAT』『cluster』などのメタバース空間で使用できるNFTアバターを制作し、『OpenSea』で販売を行う。また、アバターにアドオンして使用できるアイテムも取り扱う。

アーティストの大塚愛さんとSEAMOさん。また、アパレルブランドから『ANNA SUI』。また、『ドラゴン桜』の桜木建ニや『ハニーベア』。実業家の堀江貴文さんや作家の岸田奈美のアバターを第一弾として発売する。

なぜ、コルクがアバターを事業として扱うのか。外部パートナーに権利を許諾するのではなく、コルクが主体となるのか。

ぼくは「物語の力で、一人一人の世界を変える」というコルクのミッションの延長線上に、アバターは存在していると考えている。

アバターに自分の体を重ねるとは何か。
それは精神を拡張し、自分の世界を広げていく行為だ。

ぼくがこう考える原体験は、ドラゴン桜の桜木としてVチューバー活動をしていたことにある。

この桜木の「中の人」をぼくがやっていたわけだが、桜木のアバターを着ていると、ぼく自身の口調や振る舞いが変わっていく。普段は言い切らないことまで、堂々と言い切っていく。それは演技としてではなく、自然な発露としてだ。

車を運転していると、性格が大胆になる人がいる。介護現場ではパワードスーツの開発が進んでいるが、スーツを着た高齢者は身体的に強化されるだけでなく、性格までもが変わるという話を聞く。どちらも機械によって、人格が拡張されていて、これと同じようなことがアバターでも起こる。

ファッションで自分の性格や行動を変えるという話もあるが、メタバース空間のアバターは、性別や肉体までも自由に変えられる。これまでの自分とは全く違う「新しい自分」になることができる。

先日、バーチャルライブ配信アプリ『REALITY』の代表・DJ RIOさんと対談する機会があり、印象的な話を聞いた。

RIOさんは、現実世界では男性だが、メタバース空間では女の子のキャラクターのアバターで過ごしている。メタバース内で他人から「かわいいね」と言われると嬉しいけど、「エッチだね」「セクシーだね」と言われると、少し嫌な気分になるそうだ。性的な目で男性から見られるのが嫌だという女性の気持ちが、以前より理解できるようになったとRIOさんは話していた。

アバターを通じて、様々な感情を経験することで、自分の世界を広げていく。こうした動きは、メタバースの発展により、さらに進んでいくだろう。

そう考えると、これからの時代、多くの人が「これを身に纏って、振る舞ってみたい」と思えるアバターをつくることが、物語の創作と同じくらい大切になってくるかもしれない。

平野啓一郎の最新作『本心』は、2040年代の日本を舞台にしているが、「アバター・デザイナー」を職業とする青年が登場する。彼の年収は数億円で、彼がつくるアバターには高額な値段がついている。近い将来、彼のような存在が、現実世界でも表れるだろう。

コルクには、アナログゲームクリエイターのしんどうこうすけが所属している。普段はアナログゲームのことばかりを考えている彼が、気がつくと、プログラマー・CGクリエイター・モデラーの仲間を集めて、NFTアバターを作り出していた。

はじめ、ぼくはそれはコルクの新規事業になるのか迷った。でも、よく考えたら、アバターには無限のストーリーが宿っていて、まさにコルクがやるべき事業だと考えるようになり、そのチームにぼくも加わった。

アバターについて考えることは、創作において魅力的なキャラクターを考えることに等しい。どういう自分になりたいか。どういう自分でありたいか。そういったアイデンティティーについて考えることにも繋がる。

メタバースが発展していくなかで、アバターは人間のアイデンティティーをどう変えていくか。METABAをやるなかで、この「問い」について、深く考えていきたい。

ぼく自身、2022年は、現実の自分とは全く違うアバターを身につけて、メタバース空間で過ごす時間を増やそうと思っている。どんな新しい感情と出会えるかが、とても楽しみだ。

1月1日には、各アバターが一体ずつOpenSeaで発売になる。アバターが本格的に使われるようになるのは、日本では、まだ数年先だろう。しかし、その変化の初期を味わうために、コルクが作ったアバターでメタバースに行ってもらえたらと思う。


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佐渡島庸平(コルク代表)
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