スクリーンショット_2019-06-25_11

子供も大人も自由だ。 【SNS時代の子育て #01】

以前、僕は『ベビモフ』というWebサイトで「SNS時代の子育て」という連載を書いていた。

どうしてこの連載を引き受けたのかというと、育児で感じる細かい気づきを覚えておきたいと思ったからだ。

僕にとっての子育ての楽しさとは、「変化が微妙であること」。

子どもは昨日までは言えなかったことがある日突然言えるようになる。例えば、「明日」のことをずっと「昨日」と表現していたのが、ある日突然「明日」と言えるようになり、未来の概念を獲得したことに驚かされたりする。

でも、日々続いていく子育ての中、そうした感情や細かい気づきは忘れていってしまう。子どもの成長を写真に撮ったりしても、その時感じた些細な気づきや喜びまでは納められない。

僕自身が子どもの頃に「こんな親にならないように絶対覚えておくんだ」と感じた思いなども全部忘れてしまっている、と子育てを通じて感じた。育児をすることによって、過去の自分がどう考えていたのかを思い出したりするけど、それもまたすぐに忘れていってしまう。

だから「記録として残すのもいいな」と思い、連載を引き受けた。

連載自体は終了してしまっていたのだが、コルクラボのメンバーから、僕が子育てについてどのように考えているのかを知りたいとリクエストを貰うことが多いこともあり、このnoteマガジンで連載を復活させることにした

無料部分では、ベビモフで連載当時の僕が書いていた内容を転載し、有料部分では、連載から1年以上経った今、僕が子育てに関して感じていることをインタビュー形式でお届けします(子育てに関する話になると、どうしてもプライベートなことが多くなるので、有料部分のみでの公開にさせてください!)。

僕もそうですが、子育てに日々奮闘する人にとって、何かしらの参考になれたら嬉しいです。

---✂---

子供も大人も自由だ。

長男の誕生は、僕の起業の大きなきっかけだ。

僕は、講談社という出版社で編集者をしていた。

インタビューで「大企業を辞める勇気がよくありましたね。どうしてですか?」と質問をされる。その時に、「長男が2歳で、次男は妻のお腹にいる時に起業したのですよ」と答えると、もっと驚かれる。

でも、子供の誕生は、起業の足かせではなく、後押しだった。
 
「子供のために、仕事を頑張る」「子供のためならなんだってする」。そのようなセリフを、よく耳にする。僕も子供ができたら、そんな風に思うのだろうか。

長男の妊娠でお腹が大きくなった妻を見ていても、全然そんな考えが湧いてこない。

女性は、毎日、赤ん坊が成長するのを体で体験し、時間をかけて母となっていくのかもしれないが、僕にとって父になることは想像力を必要とする作業で、すごく難しいことだった(実感が湧かないことをもっともらしく言うとこんな感じで、子供の頃から周囲の人に些細なことを立派なことのように言うと突っ込まれることがあります)。

子供の名前について話し合ったり、子供服を買ったりしても、父親としての責任感なんてどこからも湧いてこない。生まれてきたら、感情は変わるのか?

出産は、立ち会いだった。「どうぞ」と看護師さんに声をかけられて、妻が横たわるベッドの脇まで進む。

生まれて間もない長男が、必要最小限の処置だけを受けた状態(ぐちゃぐちゃの状態ということです)で、そこにいる。

どう表現するといいのだろう。あまりにも不思議すぎて、神秘的すぎて、人類の偉大さ、DNAの不思議さに、感動が押し寄せてくる。

それまでほとんど他人事の出産だったのに(せっかくだからいつか漫画家に出産時の資料写真が欲しいと言われても困らないように写真を撮ってまわっていた)理由もなく、涙が溢れる。

子供の泣き声はしっかりしている。体重も標準よりあって、元気いっぱいだった。しかも、明らかにもう僕に似ているのが、鼻のかたちなどでわかる。

言語化しづらい感動が心に押し寄せている一方で、僕は、赤ん坊のたくましさを感じていた。瞬間的に、ここにいるのは、自分とは別の生き物だと直感した。そこにあるのは、一個の個体で、僕の意志で自由にしていいものではなかった。

どれだけ僕と似通っていようとも、その存在は、僕と妻の延長線上にあるものではなく、自立した存在として尊重しないといけないものだった。

分身ではなく、「他人」。その時心に浮かんだ、子を他人と思う気持ち、それが何なのかを僕はしつこく考えた。

それでこんな風に思った。

僕にできることは、この子が好き勝手、自分のやりたいように生きるのをサポートすることであって、生き方を提示することではない。

「子供のために、仕事を頑張る」というのは、この子を一個の存在として認めていない、傲慢な考え方だ、と。

最終的に起業を決断したのは、2012年の4月。長男が1歳半、妻が次男を妊娠しているときだった。

それで、すぐに会社に辞める報告をして、どんな会社にするかを必死に考え、2012年10月1日、ベンチャー企業・コルクを創業した。

今は、さらにもう1人増えて、息子が3人いる。子供が増えることで、家庭の楽しさはどんどん増えていく。

でも、やっぱり、仕事への気持ちは変わらない。僕は、僕が人生を楽しむために仕事をする。

ちなみに、僕の妻は非常に健康的なのだが、自分は体が弱いと思っていて、出産も難産を予想していた。結果はというと数時間で出てきて、理想的な出産だった。

それで僕は、本当に素直な気持ちで「楽な出産でよかったね」と話しかけた。

すると「楽な出産なんてあるわけないでしょ。『おつかれさま、頑張ったね』と言えないのか」とひどく怒られた。今でもたまにその時のことで怒られる。

どれだけ自由に生きようとも、妻に話しかける時は、ひと呼吸待って考えてからのほうがいいと学んだ出産でもあった。

子供が生まれる前は、子供によって自分の生き方が縛られることを恐れていた。

いざ生まれてみると、子供に縛られていることにして、挑戦しないことを肯定する甘えがあるだけだった。子供は親を縛ろうなんて全然していなかった。

子供は、自由に生きたらいい。僕も、僕がやりたいように好きに生きていいのだ。成長していく赤ん坊の姿を見ながら、そんな当たり前のことにやっと確信を持てた。

どうすれば、明日急に死んでも後悔しないような、自由な生き方ができるのか? そんなことを考えだしたら、会社を辞めて起業しようという気持ちに自然となってきた。

子供の誕生が、起業の勇気を与えてくれた。子供を理由に諦めてしまえるような挑戦なら、本気の挑戦ではないのだ。

Illustration:Kinosita Sinya

(2017年5月1日 執筆)

---✂---

ここから先は、現在の僕の子育てに関する考えをインタビュー形式でお届けします(子育てに関する話になると、どうしてもプライベートなことが多くなるので、有料部分のみでの公開にさせてください!)。

※「週刊!編集者・佐渡島の好きのおすそ分け」の定期購読者の方は、こちらもお読みいただけます。また、コルクラボのメンバーはコミュニティの掲示板で公開します。

ちなみに、今回のインタビュー記事のタイトルは「子どもであっても、全ての人は自分で課題解決ができる」です。

この続きをみるには

この続き:3,884文字
記事を購入する

子供も大人も自由だ。 【SNS時代の子育て #01】

佐渡島庸平/コルク代表

500円

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

購入&サポート、いつもありがとうございます!すごく嬉しいです。 サポートいただいた分を使って、僕も他の人のよかった記事にどんどんサポート返しをしています!

ありがとう!コメントももらえると嬉しいです!
94

佐渡島庸平/コルク代表

2002年に講談社に入社し、週刊モーニング編集部に所属。『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)などの編集を担当する。2012年に講談社を退社し、作家のエージェント会社、コルクを設立。

週刊!編集者・佐渡島の『好きのおすそ分け』

コルク代表・佐渡島が、「コンテンツのDJ」として自分の好きを届けていくマガジンです!編集者や経営者としての日々の気づき、注目しているクリエーターや作品、影響を受けた話などを配信していきます。また、マガジン購読者限定の特別コンテンツとして、有料者限定記事、公開日記、製作途中の...
3つ のマガジンに含まれています

コメント3件

我が家も子ども三名と生活していますが、同じく、家族とはいえ他人だと思いますが、最も親しい他人であり、友人だと思ってます。共感の数や質を数多く共有できるからこそ、提供できる選択肢を増やしてあげたいと思うんですよね。

スゴく勇気をもらえたポストでした。ありがとうございます!
娘3人はイージーモードと実感しました(笑)家族内ケンカ、皆無です
わー、これは楽しみな内容!うちもエネルギーいっぱいの5歳児がいるので、すごく参考になります。子育てとい視点だけでなく、経営や仕事とのつながりを語ってくださるのでいつもハッとさせられます。これからも楽しみにしています!
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。