どうやったらリーダーになれるのか?
アメリカのビジネススクールの名門・ウォートン校で、世界中から集ったエリートたちが競い合って受講する授業がある。受けられるのは、年間たった25名のみ。ウォートン校に入るのですら大変なのに、その授業を受けるためには、さらに選抜試験を受けなくてはいけない。
受講生たちは、その授業が終ったあとに、自分の価値観が変わったと口々にいうらしい。
大学時代の先輩・塩崎彰久さんは、その授業の受講生の一人。
「とにかくすごい授業だから、その教科書を日本で出版したい。自分が翻訳するから協力してくれ」
そんな風に塩崎さんに相談されて、『トータル・リーダーシップ』を読み始めた。
世界最高峰のリーダー論とは、どんなものだろう? いったい何を学べば、多くの人から信頼されて、決断できるようになれるのだろう?
ワクワクしながら、僕は本を読み出した。
読み始めて、正直、僕はがっかりした。「何なんだ、この本は!? 当たり前のことしか書いてないし、面白くない。こんな本が日本で売れるわけがない」
そう考えて、僕はこの本の企画を断ろうと思った。
でも、次の日になって、僕は考え直した。
何だか僕の考え方が、本を読み始める前と違うのだ。
そのとき、僕は講談社を辞めて、起業しようかどうか迷っていた。僕は色々な状況を想像して、どっちの方が得なんだろうってことを考えていた。
迷っている時に、答えを外部に求めると、いつまでも結論がでない。情報を集める気になれば、いつまでも集められるし、終わりがない。
でも、答えを自分の心の中に求めると、決断することができる。
僕が望んでいるのは、講談社で出世することではなく、作家と一緒に仕事をしていくことなのだ。自分の考えがはっきりすると、決断ができて、前に進むことができた。
つまり、大切なのは、情報の分析がうまくなったりすることではなくて、自分についてより深く知ることなのだ。
『トータル・リーダーシップ』の中の課題は、すごくシンプルだ。
「これまでの人生を振り返って重要な出来事やエピソードを4、5つ思い出してみよう」
「尊敬する人物について、一段落分書いてみよう」
こんな感じだ。当たり前のよくあるような質問だ。しかし、出される順番に課題をこなしていくと、自分について深く知れるようになる。自分を深く知ると、世界の見方が変わってくる。悩みのほとんどは、自分の心の中に答えがある。
自分の考え方が変わったことをきっかけに、僕は本への評価を改めた。
派手さはない本だけど、この本の課題をやることで、多くの人の悩みが解決するだろう。だから、バカ売れはしなくても、出版する価値はある。
この本は、講談社時代に僕が企画した最後の本だ。
完成の前に会社を辞めて引き継いでしまったので、ずっと心残りだった。
やっと発売になり、無事重版がかかった。心の中に残っていた重荷が全部おりて、やっと気分が楽になった。
リーダーになるために必要なことは何か?
自分を深く知ることだ。シンプルだけど、もっとも難しい。
僕たちは、自分の人生のリーダーにならなくてはいけない。なんとなくの日々を過ごし、悩んでいる人におすすめの一冊だ。
トータル・リーダーシップ 世界最強ビジネススクール ウォートン校流「人生を変える授業」
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