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見えないものを想像できるか?

 世の中のすべてのことが、白黒はっきりつけれるわけではなく、グラデーションの中にある。そのことを頭で理解している。しかし、良く知らないことは、勝手に白黒はっきりつけられる世界として想像してしまっている。

 聴覚障がいとはどんなものなのか? 山本おさむの『遥かなる甲子園』という聴覚障がいの高校球児の物語が大好きで読んだりしていたので、少しは知っているつもりだった。

 しかし、吉本浩二の『淋しいのはアンタだけじゃない』を読むと、自分が全く聴覚障がいのことを知らなかったのだと理解させられる。音が聞こえない、聞こえにくいとはどのようなことなのかが、非常にわかりやすく説明されているし、それを健常者が想像できない分、どれだけ苦労するのかが、良く伝わってくる。そして、世間を騒がした佐村河内さんのゴーストライター疑惑も、世間の偏見の影響をどれだけ大きく受けていたかが、次第に明らかになっていく。

 エッセイマンガの形式で、作品には作者の吉本浩二が出てくる。吉本さんが、何気なく聴覚障がい者に「みなさんの笑顔いいなぁ、なんて明るいんだろう」と伝えたあとの、反応が予想と全く違って、そのシーンが頭からこびりついて離れない。

 ろうあ者は、他人に話しかけることができないから、急に相手の肩をつかむとかしないといけない。状況を理解しない相手は警戒をする。他人から警戒されて過ごす一生だから、笑顔じゃないといけない。笑顔は聴覚障がい者が生き抜くための唯一の武器で、幼い時から笑顔がうまくなるように教えられるのだ。

 「笑顔が素敵」そんな誰も傷つけることがないと思う言葉で、傷つく人たちがいる。世間には、なんと様々な人生があるのだろう。そして、どれだけ自分は、自分の人生を中心に世間を類推してしまっているのだろう。

 見えないもの想像する力こそが優しさで、そういった優しさを持てる大人になりたい。


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コルク代表・佐渡島のnoteアカウントです。noteマガジン『コルク佐渡島の好きのおすそ分け』、noteサークル『コルク佐渡島の文学を語ろう』をやってます。編集者・経営者として感じる日々の気づきや、文学作品の味わい方などを記事にしています。