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「つまらない」が実は宝だ!!

編集者は、世間がまだ気づいていない「面白い」を発見する仕事だ。

「面白い」は青い鳥のようなもので、それを追い求めていると見つからない。逆に「つまらない」に着目すると急に見つかる。

「つまらない」は、2通りある。

難しすぎて、わけが分からなくてつまらない。その時は、その難しさをほぐすことができれば面白くなる。

もう一つは、繰り返しなんどもやっていて、飽きてしまってつまらない。その時は、繰り返しやる中で、その人にとっては当たり前だけど、世間が知らない新情報がある。そこにスポットライトを当てると面白くなる。

このことを、僕に気づかせてくれたのは、『ドラゴン桜』の作者の三田さんだ。

講談社に入社して一年目。三田さんは、僕が灘高、東大卒のであることを「東大卒のマンガ編集者にはじめて会った」と珍しがってくれた。そして、雑談のなかで、「東大合格者を100人生み出す学園マンガなんて面白いんじゃないか」と三田さんが口にした。

当時の僕は、そのアイデアに大反対。そんなマンガは誰も読みませんと言い切っていた。なぜなら、早慶より東大に行くほうが簡単で、主人公たちが挑戦するハードルとしては低すぎると思ったからだ。三田さんがずっと描いてきた甲子園球児の方がずっと難しい挑戦をしている。

実際に、灘高では高2までは遊びまくっていて、高3の当初で偏差値40くらいだった人が、1年間の勉強で東大に合格するケースがよくある。東大の入試は、基礎を抑えれば、あとは応用で解ける。だが、早慶の場合は暗記量がものを言うので、過去問対策にしっかりと取り組まないと合格できない。1年弱の勉強で現役合格を目指すなら、早慶よりも東大のほうが簡単というのは、進学校では常識。

それに東大入試って、満点を目指すわけではない。文系だと数学4問のうち、1問も解けてない人でも合格できている。60%取れれば、合格できる。問題をみて分からなくても悲観する必要はない。そのことも進学校では常識だった。

常識をマンガで描いても、つまらないと思ったのだ。

だが、三田さんは、そんな常識は世間では誰も知らないから、マンガで描く価値がある。僕が世間も知っていると勘違いしているだけだと三田さんは言う。全く自信が湧かないまま誕生したのが『ドラゴン桜』だ。

当初、僕は不安だった。でも、蓋を空けてみたら大ヒット。(少し時間はかかったけど)僕にとって、当たり前でつまらないと思っていたものが、世の中にとっては新鮮で面白いと受け入れられることを知った原体験となった。

そして、『ドラゴン桜』の取材では、僕自身が、相手の「つまらない」に着目することで面白いを発見する機会を何度も体験した。

担当編集の僕は、ドラゴン桜で使えそうな勉強法のネタ集めをして、それを三田さんに紹介する役割を担っていた。それで、様々な教育関係者の人に取材をしたのだが、「この勉強法はユニーク」と相手が思っているネタの多くは、特殊事例すぎてマンガには使えないものだった。

でも、取材終わりにポロっとこぼす何気ない一言が面白い。

例えば、遅刻や欠席が少ないクラスは進学実績が良くて、遅刻とか欠席が多いクラスは進学実績が悪いという話。具体的な勉強法の話ばかり聞いてきた僕としては、そもそもの土台として生活習慣を整えることが大事という内容は目から鱗だった。だが、相手はそんなのは当たり前だと思っていて、「その話を詳しく聞きたいです!」と切り込むと、これはどの先生も知ってることだよ。わざわざ自分が話さなくても、と言う態度になる。

このように、相手にとっては当たり前すぎて取材で話す必要がないと感じていることが、新鮮で格好のネタになることは実に多い。

その領域のプロになるとは、経験を重ね成熟していくなかで、新鮮さや初々しさを失っていくことでもある。その結果、どうしても世間と自分が感じる面白さにギャップが生まれてしまう。

だから、今、「自分は面白いことを何も言えない」と思っている人も、世間の人から見たら面白いネタを大量に持っている可能性がある。

当たり前すぎて、自分が面白さを感じなくなってきていることにこそ、自分の「強み」は宿っているのだ。

自分が「つまらない」と感じるものに宝は眠る。

だから、「自分の強みがわからない」と悩んでいる人は、自分がつまらないと思っていることも、他人に話してみたり、noteやSNSで発信することをオススメしたい。

それが、自分の強みを見つける最大の手段となるはずだ。

僕は過去の話はしない、今の自分の考えをアップデートするためにブログを書くと決めていた。けれど、それは強みをうまく活かしていないのではないかと指摘され、今後は、過去の成功体験を今の視点で語り直すことを何度かしていこうと思う!

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