アルキメデス

雑談から企画を始めよ! 『アルキメデスの大戦』はどのように始まったのか?

『ドラゴン桜』『インベスターZ』の三田紀房は、僕の企画の先生だ。

三田さんと食事をしている時に、「コルクはもっと企画の会社として磨いた方がいい」とアドバイスをされて、『コルクラボ編集専科』を始めることにした。

『君たちはどう生きるか』の羽賀翔一も、描き上げる前に三田さんの事務所に行き、一緒にアドバイスをもらった。その時もらったアドバイスの一つが、とても印象的だった。

「壮大なテーマから考えるな」

ドラゴン桜では「教育とは何か」、インベスターZでは「お金とは何か」という壮大なテーマを扱っている。なのに、壮大なテーマを扱おうとしてはいけないという。

その理由は、壮大なテーマを描こうとすると、身構えてしまい、いつまでも描きはじめれないから。まさに、羽賀くんに起きていたことだった。

ドラゴン桜は、「潰れそうな学校って、どうやって再建したらいいかな?」が打ち合わせの始まりだった。インベスターZも、アメリカの大学がファンドを運営しているという話を聞き、「運用しているのが高校生だったらどうなるかな?」という疑問から企画は始まった。

どちらも、直前に見聞きしたニュースなどから生まれた雑談が企画になっている。「企画を考えるぞ!」と、意気込んで打ち合わせをしていたわけではない。

連載中の『ドラゴン桜2』も、「入試制度って変わるらしいけど、詳しいの知ってる?」という雑談から始まった。

現在、実写版映画が公開中の『アルキメデスの大戦』は、とても壮大なテーマを真正面から描いている。「戦争はなぜ起こってしまうのか。平和とは、真実とは何か」。映画もマンガも、そんなことを深く考えさせられる作品だ。

この作品は、僕は関わっていないのだけど、どのように企画が生まれたのかを三田さんから聞かせてもらったことがある。

みんなは、何が企画の端緒だと思うか? ちょっと考えてみてほしい。




企画のはじまりは、新国立競技場の建築予算が莫大な金額に膨れあがっていく様子を見て、「現代版の戦艦大和みたいだ」と感じたことだったそうだ。

制空権を得たものが勝利する時代になっても、旧来の巨艦主義の幻想を捨てられずに生み出された戦艦大和と、オリンピック後には無用の長物になると危惧されている新国立競技場が重なる。

戦争やオリンピックといった熱に浮かされるものがあると、人は正しい判断ができなくなってしまう。これだけ時代が変わっても同じようなことが起こるなら、戦艦大和が生まれた経緯を描くと、現代性があって面白いかもしれない。更に、天才数学者が登場して、計画を阻止しようとすると、物語が面白くなっていくんじゃないか。

そんな風に、企画が膨らんでいき、自然と「なぜ、人は戦争をしてしまうのか?」といった壮大なテーマにたどり着く。

壮大なテーマは、たどり着く先であり、企画のはじまりにはなり得ない。

企画会議で、壮大なテーマを掲げると、耳触りがよく、反対されにくいかもしれない。しかし、そこから先に企画が進まなくなる。

企画は、すごく卑近な、聞いた瞬間から気になる「具体」から入っていった方がいい。「雑談」には、その具体がたくさんある。

面白いことを発想したければ、雑談をしている時の「ちょっとした自分の心の変化」に気づけるようになることが大切だ。


実は、『宇宙兄弟』の成功も、三田さんのアドバイスがあってこそだった。

その時、もらったアドバイスについては、有料部分で。

・・・

最後に、映画『アルキメデスの大戦』は、過去を描いた映画ではない。現在の日本の空気を描いている。

旧世代と新世代のコミュニケーションの断絶。そして、旧世代が現在を理解しないことで、止めることのできない大きなミスを犯してしまう。まさに今の日本でも進行していることのように僕は思う。

映画は戦艦大和が沈没するシーンから始まる。その映像は、まさに圧巻。『プライベートライアン』が公開された時に、始まりの戦闘シーンが絶賛されたが、そのことを思い出した。

映画を観た後に、漫画を読む。その順番で味わうのを僕はオススメする。

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佐渡島庸平/コルク代表

2002年に講談社に入社し、週刊モーニング編集部に所属。『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)などの編集を担当する。2012年に講談社を退社し、作家のエージェント会社、コルクを設立。

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