左ききのエレン

絵がうまいとはどういうことか?

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 先日、マンガ新聞のイベントで、かっぴーと集英社の伝説的な編集者・浅田さんと鼎談する機会があった。

 かっぴーは、『左ききのエレン』という作品を、cakesで連載しているマンガ家だ。この作品、マンガ業界や広告代理店の人から熱狂的に支持されている。僕も好きだ。感情を揺さぶってくるセリフが、バシバシ出てくる。

 かっぴーのマンガは賛否両論だ。否は、内容よりも、絵に関することだ。確かにこの絵が、マンガ雑誌に載っていたら、違和感がある。僕も、うまいと褒めることはできない。

 では、かっぴーの絵は下手なのか? 実は、かっぴーは美大を卒業している。美大の入試には、基本デッサンがあるから、そのような絵を描けるはずだ。

 「美大を出ていて、もっとしっかりした絵も描けるはずなのに、なんでこのような絵なの?」僕の直球に質問へのかっぴーの答えは、かっぴーがマンガとは何かを本質的に理解していて、これからさらにすごいマンガ家へと成長することを確信させるものだった。

 デッサンとして、しっかりとした絵を描くことはできる。でも、そのような絵だと感情が伝わらない。感情を最大限に伝える絵にしようとしたら、なぜかこんな風になってしまう。

 正確な言葉は覚えていないのだけど、上記のようなことをかっぴーは答えた。正しい描写は、人がやるよりも、カメラがやったほうが、うまくいく。マンガという形式で描く魅力は、作者に世の中がどのように映っているかを伝えることだ。『左ききのエレン』は、そこを最重視しているから、このような絵になる。

 世の中に上がっている多くのイラストは、“正しく”あろうとしている。そして、その正しくあるための努力をする過程で、感情がゆっくりと抜け落ちていってしまっている。その正しいを知っているのに、無視をするかっぴーの勇気はすごい。批判がくるのを理解しながら、本質的な方をつかみ取る直感力が、『左ききのエレン』の表現しがたい魅力を生み出している。

 感情を伝える絵がいい絵だと定義したら、かっぴーの絵は、おそろしくうまい。そのうまさを残したまま、商品として、見栄えをどうよくしていくか。それがかっぴーが今、直面している悩みだろう。

 今、休載している『左ききのエレン』が、このあとどうなっていくのか?作品だけでなく、かっぴーのこれからが楽しみだ。

 気になった人は、『左ききエレン』をKindleでどうぞ!

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 ここから先は、小山宙哉が新人だった時に、今回のかっぴーと同じように、一流の作家になると確信した時の話。

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佐渡島庸平/コルク代表

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2002年に講談社に入社し、週刊モーニング編集部に所属。『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)などの編集を担当する。2012年に講談社を退社し、作家のエージェント会社、コルクを設立。
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