疲労という"麻薬"を、どう見える化するか?
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疲労という"麻薬"を、どう見える化するか?

不安から逃れるため、多くの人が意識せずに使用している麻薬がある。

それは「疲労」だ。

大きな疲労を感じることで、不安やストレスを感じる暇が消え、自分は精一杯生きているという自己暗示にかかりやすくなるという話が、平野啓一郎の『空白を満たしない』で登場する。

「疲労は確かに麻薬に似てます。今、言われて思い出しました。僕自身、どっかで体を酷使していることに慰められてもいましたから。不安を感じる暇もありませんでしたし。(中略)生きている感じがしました。自分は、一度しかない三十代という時を、決して無為には過ごしてないんだと」

だが、心身に抱え込んだストレスは、消えるわけではない。確実に蓄積されていき、どこかで決壊を迎える。『空白を満たしない』では、働き盛りの30代の自殺の多さには、疲労による充足感により心身の状態を見誤り、過度なストレスを抱え込む人が増えているからではないかという論も登場する。

また、最近読んだ『のびのび働く技術』という本には、こう書いてあった。

「人は忙しくしていればしているほど、自分が立派になったような気がするものです」

長時間走り続けると次第に身体が高揚感を抱くようになる「ランナーズハイ」と同じで、忙しくしていればしているほど自分は充実していると感じ、自分の状態を正確に把握することが難しくなるということだろう。

今、リモートワークになって、働きすぎる人が増えている。スマホでずっと仕事をしてしまう。僕も、年末にスマホでこの原稿を書いている。

新型コロナウイルスにより広がる漠然とした不安は、疲労への憧れに拍車をかける。2020年は社会の様々なことが変わった。そして、来年が今年より落ち着いた一年になるかは、誰にもわからない。これからも起きるであろう予想不可能な様々な変化に対応できるか、不安が止めれない。

その不安を少しでも和らげるための麻薬として、働きすぎることで得られる疲労感を無意識に欲しているのではないだろうか。

人生において最も大切なものは心身の健康だ。

健康でさえいれば、失敗したとしても、また挑戦ができる。挑戦し続ければ、必ずいつかは成功を得ることができる。いや、成功なんて得る必要もない。心身ともに健やかであり続けることが、人生を楽しむための基盤で、健康なことが成功だ。

だから、コルクでは、社員や一緒にやっている新人マンガ家たちが、自分の健康を自分でケアできるように様々な仕組みを導入してきた。

自分の心身の状態がどうなっているのかは、自分ではわからない。Fitbitのようなデバイスで体の状態を客観的にデータとして把握することも重要だし、カウンセリングを受けたりして、心の状態について外からアドバイスをもらうことも大切だ。自分のことは自分が一番分かっていると、主観的に健康状態を管理すると、大抵見誤る。

現在、コロナでリモートワーク中心となり、誰がどれだけ働いているかが、お互いに見えづらくなった。自分の健康を自分でケアしていく必要性が増したとも言える。

リモート環境で、無意識に働きすぎてしまう人に、どうやって自分の状態を客観視し、働き方について考える機会を提供するか。これは、経営者として考えないといけない課題だ。

そんな事を考えていた時に、「知識製造業」を営むベンチャー企業『リバネス』代表の丸さんと昔した会話を思い出した。社内のslackデータをリバネス社内で分析してるというのだ。

slackへの投稿頻度が下がっているメンバーは、退職手前の段階かもしれない。slackへの投稿頻度が多いチームと、成績の良いチームには相関があるかもしれない。そんな仮説をもとに、slackの行動履歴を分析し、社内の状態を見える化しているらしい。

昔聞いた時は、面白いと思っただけだったけど、今は、コルクにも必要かもしれないと考え、「コルクのデータも分析できませんか」とリバネスの井上さんに相談させてもらった。slackの利用状況をデータとして把握することで、自分たちがどんな働き方をしているかを客観的に知るキッカケになると思ったからだ。

そうして、コルクのslackを分析してもらった。

すると、社員ごとにslackの利用傾向がバラバラであることが分かった。例えば、子育て中のあるメンバーは、夜の18時〜21時の時間帯はslackを一切触らない。また、土日も深夜でもお構いなしに投稿するメンバーもいる。

これまで、お互いの働き方に違いがあることは分かっていたつもりだったが、データで見ると、話し合いが発生する。

この調査結果を踏まえて、コルクの一部署では、slackのデータをもとに、どういう働き方をしたいかを改めて各自が考え、「自分のコアタイムはこの時間」と互いに宣言することにした。そして、自分と他人の働き方には違いがあることを意識し、可能な限り、相手の働き方を尊重するように心がける気持ちが部署内で芽生えている。

とはいえ、自分で働く時間を定めても、その通りに仕事を進めるのは難しい。仕事にイレギュラーはつきものだし、仕事に熱が入り過ぎて、タイムオーバーしてしまうことはよくあることだ。

ぼくは、仕事をやりすぎることを否定するつもりはない。多少の無茶をしても、ギアを入れたほうがいいタイミングはある。

でも、自分の状態を見える化する仕組みは、絶対に必要だ。やりすぎる時も、自分がそれを把握できていたら、工夫できる。

データを見る習慣を持つことで、このままアクセルを踏んだほうがいいのか、一度ブレーキをかけたほうがいいのか、考える機会をもつことができる。目に見えない疲労と上手く付きあっていくには、データと照らし合わせて、客観的にアプローチしていくしかない。

コルクでは、エンゲージメントサーベイツールの『wevox』を使って、社内の心理状態を把握しようとしてきたが、行動状態を分析するslack分析が加わることで、より正確に自分たちの状態を見える化できる予感がしている。

目に見えない疲労という麻薬を、どう見える化するか?

健康でいることは、努力を必要とすることだと、こんなにも僕が実感しているのは、歳のせいなのか、時代の影響なのか。2021年は、疲労していない時間を増やすことを僕の目標にしようと思っている。

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佐渡島庸平(コルク代表)

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