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組織の生産性を高める、「三角形の関係」とは?

誰かと深い関係を築こうと思ったら、練りに練った「長文」の告白をするのではなく、「短文」で対話を重ねる。

以前投稿した『心理的安全性と、短文コミュニケーション』というnoteに書いた言葉だ。

会社には多様な背景を持った人間が集まる。良かれと思って発信したメッセージや行動が、ネガティブに受け止められたり、意図しない解釈で受け止められてしまい、関係がこじれることがある。

他者同士が協力しあい、居心地のいい場所を築くためには、お互いの行動の前提となる価値観や背景をさらけだしていくしかない。だからこそ、コルクでは行動指針のひとつに「さらけだす」を掲げている。

「さらけだす」と言うと、自分について知ってもらうために、しっかりとした長文のコミュニケーションが必要と勘違いされて、躊躇されることがある。でも、「さらけだす」の目的は相互理解だ。

短文だと短い会話になるので、相手のことを理解できなかったり、誤解が生まれることもあり得る。でも、それが会話を生むフックにもなり、継続的なコミュニケーションが生まれる。

今の自分の感情だったり、最近感じたことを、短文でコミュニケーションしあえる関係性が築かれている。それが、「さらけだし」がうまくできている状態ではないだろうか。

この短文コミュニケーションで「さらけだす」について考える上で、重要と感じる視点がある。

その視点を与えてくれたのは、ハピネスプラネット代表の矢野和男さんだ。

矢野さんは「どういう組織なら、人が幸せを感じることができるのか」を科学的に調べる研究を長年していて、人の動きを観測するセンサーを開発し、その行動データを分析してきた。

ぼくと矢野さんとの関係は、以前投稿した『予測不能な時代を"幸せ"に生きる鍵は易経にあり』というnoteに書いたが、ここ数年は定期的に対談をして情報交換をしている。先日も「AIは人間をどうとらえるか?」というテーマで対談をさせてもらった。

矢野さんの研究結果で面白いと感じるのは、幸福と生産性の因果関係だ。

多くの人は「好きな仕事をしていると幸せを感じられる」「仕事がうまくいくと前向きになる」と考えると思う。でも、この20年間あまりの研究で明らかになったのは、逆の因果関係だ。

主観的に自分が幸福であると感じられる人は、たとえ面倒で面白くない仕事でも、労をいとわず行うことができる。一方、幸福度が低い人は、精神的なエネルギーが足りないため、面倒なことになかなか手をつけられない。

仕事へのやりがい以前に、精神的な原資があるかどうかが、生産性を大きく左右する。組織の生産性を高めるためには、従業員の幸福度に着目することが欠かせないというのが、矢野さんの主張だ。

そして、矢野さんの研究では、さらに重要な発見があった。

それが「三角形の関係」の重要性だ。

たとえば、マネージャーであるAさんに、BさんとCさんという2名の部下がいて、 Aさんがそれぞれとコミュニケーションをとる一方で、BさんとCさんが話をする仲でなければ、「V字型の関係」だ。逆に、BさんとCさんがコミュニケーションをとっていれば「三角形の関係」となる。

仕事の現場においては、指示や報告などの用件を伝えるコミュニケーションが中心になりがちで、それを個別に行う「V字型の関係」になりがちだ。

だが、長年の研究結果の末、「V字型の関係」だけではなく、同僚との横や斜めのつながりを含めた「三角形の関係」がないと、前向きでウェルビーイングな組織にはならないということが判明したそうだ。

現在、矢野さんは、職場で「三角形の関係」を育むためのアプリを開発し、様々な企業に提供している。詳しく、知りたい人はハピネスプラネットのWEBサイトを見てほしい。

これまでコルクラボでも、コミュニティ内の心理的安全性を高めるために、雑談することを推奨してきた。オンラインの掲示板で、誰が投稿したお題に、みんなで答えあったり。slackの雑談スレッドで、ちょっとしたことを報告しあったり。

こうした短文のちょっとした雑談は、「三角形の関係」を育むためのものと捉え直すと、頭の中がすごく整理される。

一方、こうしたコミュニケーションを職場で実現させようとすると、なかなか難しい。三角形の関係を築く大切さを、全員が理解し納得していないと、どんなに仕組みを整えても上手くいかないだろう。

コルクについて考えても、リモートワーク中心にしたことで、「三角形の関係」が以前より築きづらくなっていると感じる。一部をリアルに戻す必要があるのではないかとすら思い始めている。

横・斜めのコミュニケーションが自然と生まれて、三角形の関係が築かれていく組織になるは、どうしたらいいか。矢野さんと話すことで、向き合うべき問いが明確になった。


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表では書きづらい個人的な話を含め、日々の日記、僕が取り組んでいるマンガや小説の編集の裏側、気になる人との対談のレポート記事などを公開していきます。

『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』などのマンガ・小説の編集者でありながら、ベンチャー起業の経営者でもあり、3人の息子の父親でもあるコルク代表・佐渡…

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