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他者が見ている世界を、どう理解していくのか

期待を手放し、相手を信頼し、見守ることに徹する。

ぼくのnoteで何度も書いてきたことだが、「言うは易し、行うは難し」で、期待を手放すのは簡単ではない。特に、子育てにおいては。

例えば、こんな出来事が最近あった。

ぼくのnoteでは、息子の不登校について何度か書いたことがある。先日、学校で三者面談が開かれることになり、長男もそれには参加すると言っていた。それで、学校の前で待ち合わせを組んでいたのだけど、なかなかやって来ない。連絡をしてみたら、「行かない」と突然言い出した。

その結果、長男をわりとキツめに叱ってしまった。

以前に『強要された我慢で、人は育たない。 「叱る」をどう手放すか』というnoteを書いたけど、ぼくは「叱る」という行為に価値を感じていない。それでも思わず叱ってしまった。それは、ぼく自身が長男に期待していたことが大きかったように思う。

実は、この直前に、長男が「学校を辞めて、せどりのビジネスをはじめたい」と言ってきた。最初は何をしたいのか理解できなかったが、本人なりに詳しく調べていることがわかってきた。社会で生き抜く逞しさのようなものを感じ、長男が成長していることを実感した。学校の三者面談でも、自分のやりたいことを説明し、前に進むと期待してしまった。

勝手に相手に期待して、裏切れた気持ちになって、その結果、感情を相手にぶつけてしまう。「期待を手放そう」とやってきたのに、それが出来ていない自分を発見することになった。

こういう感情の浮き沈みは、子育てをしているとよく起こる。「明日は学校に行く」「テストだけは絶対に受ける」「そこだけは絶対に頑張る」と言っていたのに、その約束が破られた時、いつも心がザワザワしてしまう。

そんな中、自分の心の持ち方を変えてくれる本と出会った。タイトルは『学校に行かない子どもが見ている世界』だ。

これまで不登校に関する様々な本を読んできたけど、この本は一味違う。学校に行かない子どもたちと、それを心配する親たちの両方の視点がマンガで描かれていて、それぞれの気持ちに共感しながら、どういう風に子どもと接するべきなのかを深く考えることができた。

マンガを読んでいて、特に感じるのは、学校に行かない子ども達も毎日苦しんでいるということだ。

「みんなが普通にできていることが、なぜ自分にはできないんだろう」「自分はダメな人間かもしれない」。毎朝、そんな風に自分を責めてしまう。そして、学校に行かずに自宅で過ごす午前は長い。「今は三時間目で。国語の授業をやっている頃だな」「このままじゃ、良くないよな」とか考えてしまう。

そんな風に自分を責める日々が続くと、次第に心が壊れそうになってしまう。そういう危険な状況に追い詰められた時、昼夜逆転という現象が起きたり、ゲームに飲めり込んだりする。苦しい午前中を避けたり、別のことで頭を一杯にするための、人間の心が自然に選んだ自衛手段とも言える。

長男も学校がある日は昼近くまで寝ているのに、学校がない日は朝早く起きる。それなら、学校だって行けるのではと、期待が生まれる。本を読むと、その背景にある心の動きが少し理解できたように思えた。他の本でも読み、頭では理解していたが、子どもの感情も含めて伝わってくる本だった。

また、マンガを読んでいると、子どもたちは親の本音に敏感であることもよくわかる。

あるマンガでは、お母さんは「無理して行かなくてもいいんだよ」と言っているものの、「本当は行ってほしい」という気持ちがダダ漏れしてしまっているシーンが描かれている。子どもたちは親のちょっとした言動から親の本音を察していて、それがまたプレッシャーになってしまったりする。

この本を読んでいて、「学校に行ってほしい」という本音が自分の心の底にあって、それが子ども達に伝わってしまっているのではないかと、何度も考えさせられた。そして、その気持ちをもっと手放していけないと感じた。

親が子どもにしてあげられる唯一のことは「居心地のいい家」をつくることだと、この本では書かれている。

家が子どもにとって安心、安全で、居心地のいい居場所になれば、子どもの回復は早まる。「こんな自分でも大丈夫。何とかなるかも」と安心が広がり始めるからだ。そして、すっかり休めたと思えた時に、はじめて外に向かうエネルギーがわいて、自然と動き出す。

これまで「家の居心地が良すぎると、逆に引き篭もってしまうのではないか?」と懸念していたが、それも杞憂に過ぎなかった。もっと広く寛容な心持ちで、子ども達を見守っていきたいと感じた。

この本を読んで改めて感じたのは、それぞれの人は、それぞれの人が見えている世界の中で頑張っている、ということだ。でも、お互いに見ている世界が違うので、ある人の「頑張り」は、ある人にとっては「怠けている」「甘えている」ように映ってしまう。

他者が見ている世界を、どう理解していくのか。他者と健やかに共存していくために、この姿勢をもつことが何よりも重要であることを再認識した。


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表では書きづらい個人的な話を含め、日々の日記、僕が取り組んでいるマンガや小説の編集の裏側、気になる人との対談のレポート記事などを公開していきます。

『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』などのマンガ・小説の編集者でありながら、ベンチャー起業の経営者でもあり、3人の息子の父親でもあるコルク代表・佐渡…

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