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プロであることが足枷となる時代

「これからの時代に必要とされる能力やスキルは何ですか?」

講演会などに登壇すると、よく聞かれる質問のひとつだ。この回答は難しく、なぜなら、求められるスキルは時代や環境によって簡単に変化するからだ。未来予測がますます困難になる世界において、「これがあれば安心」という勝ちパターンのようなスキルは存在しない。

ただ、どんな状態になろうが絶対に必要と感じるものがある。

それは「学び直す力」だ。

自分が経験してきたことをリセットし、新しい環境のなかで、ゼロから学習しようとする姿勢。蓄えたものをアンラーンし、学び直す力だけは、何歳になっても必要だと思う。子供時代の学習は、1回目だ。1回目が得意だった人ほど、2回目の学習は苦手な可能性がある。しかし、人生が100年となってくると2回目、3回目の学び直しが必要となる。

最近、改めて、それを実感する機会があった。

コルクの経営メンバーの前職は、人気居酒屋チェーンの運営会社だった。その会社では弁当の販売事業も立ち上げて、最終的には軌道に乗ったのだが、非常に苦労したらしい。

苦労した理由は、リアル店舗の成功だった。同じ料理を提供するサービスでも、レストランと弁当では、食材の選び方から調理方法まで全く違う。レストランの感覚でいい弁当を作ると、美味しくならない。

例えば、肉であれば、リアル店舗では脂が重要になる。熱々に焼きあがった状態では脂身が多く入っている状態のほうがおいしい。だが、弁当は熱々の状態では食べない。熱を通して一度冷ました状態で食べる場合、脂身が多いと逆においしさが薄れ、脂ぎっていて不味くなる。そのため、弁当の素材として使用する肉の仕入れでは、サシが少ないものが求められる。

また、魚も、リアル店舗の場合は、養殖より天然の方がおいしい。逆に、弁当の場合は、天然は冷めた状態だと肉が少しパサッとするので、脂味が多い養殖の魚を仕入れる。

弁当会社からの転職者が、自分たちの作業風景をみて驚愕したことで、自分たちのレストランでのこだわりが的外れだったことに気づけたらしい。

この話は料理だけでなく、エンタメでも同様だ。一例として、テレビで結果を残しているディレクターが、Youtubeのチャンネルを企画しても、思うように結果を残せないことが多い。マンガでも、紙とWebでは求められる編集力やマンガ技術がかなり違うことは、僕自身が一番痛感していることだ。

ある分野で経験値や成功体験があることが、別の分野に足を踏み出した時に足枷になる。

コロナは、多くのビジネスのあり方を変える。もちろんコロナだけではない。VR,AR,ブロックチェーン。全てが、ビジネスモデルを刷新していく。

過去の経験と知識に基づき、目の前のことを理解しようとするのではなく、自分は全く門外漢のところに足を踏み出すのだと、自分をアップデートし続ける人が大きな価値を創出していくのだろう。

何かのスキルをつけるのであれば、「学び直し続ける」ことだけが、普遍なのだろう。

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