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“Common”となるコンテンツを、どう生み出していくか

オリジナリティとは何なのか?

これまでの時代、他の人が絶対にマネできない卓越したクオリティを届けることが一流と呼ばれてきた。他の人がマネできないからこそ、そこにオリジナリティがあると見なされてきた。

だが現在は、多くの人が簡単にマネができ、みんなが楽しめるネタを提供する人が親しみを持たれ、人気者になる。

Instagramでは、インスタ映えする投稿を続けるだけでは、フォロワーを増えない。料理でも、メイクでも、ファッションでも、人気を集めているインフルエンサーの多くは、投稿された写真を見て、フォロワーが「自分もそれをマネてみたい」と思える人たちだ。

音楽にしても、近年ヒットしている楽曲の多くは、その曲で誰でもマネできるダンスを踊れたり、そのダンス動画をSNSにアップしたりと、多くの人が参加できるものばかりだ。もともと音楽はカラオケで歌うなど、参加要素の強いものだったが、その色合いが濃くなっている。

もはや、コンテンツは、そのコンテンツを生み出したクリエイターだけのものではなくなってきている。

みんなの共通の資産。“Common”のようなものになってきている。

先日、ミニチュア写真家・見立て作家の田中達也さんのこの投稿を見て、そのことを改めて実感した。

ミッキーの人形とハンドスピナーを組み合わせ、それを電車の窓に取り付けると、昔のアニメでよく見かけた懐かしい映像が現れる。田中さんは見立ての名人であり、その複数の見立てのアイデアが絶妙に組み合わさっている点に感心せざるを得ない。

“Common”となっているコンテンツを組み合わせたり、掛け合わせたりして、自分のオリジナリティを作っていく。こうした田中さんの創作のあり方を見て、クリエイターのあり方が変わってきていることを改めて感じた。

実は、数年前、こんな経験をしたことがある。

BlenderとAIを活用すると、アニメがひとりで作れるようになる。マンガ同様に、アニメも個人作家が活躍できる時代が来ると考え、Blenderのクリエイターと組みたいと考えた。それで、目ぼしいクリエイターを口説きにいったのだが、その時の断り文句が衝撃的だった。

その彼は、自分の作品を作ることに興味はないと言う。それよりも、Blenderを利用する人たちが利用する『Blender Market』で、多くの人に利用されるものを生み出すクリエイターになりたいと言われたのだ。

自分だけの作品ではなく、“Common”となるものを送り出したい。クリエイターのあり方が変わりつつあることを最初に実感した瞬間だった。

今後、テクノロジーのますますの発展により、より多くの人がクリエイターになれる時代が訪れる。ぼく自身、AIを使ってマンガ作りに挑戦しているけど、テクノロジーの進化の速度に驚かされている。

そうした時代において、“Common”となるコンテンツを生み出すクリエイター。そして、複数の“Common”を組み合わせて、新しさを生み出すクリエイター。こうした人たちも一流と呼ばれるようになるだろう。

マンガの世界でいうと、“Common”となるコンテンツとは、多くの人がマネをしたり、二次創作を楽しむことができる作品だ。

考えてみたら、主人公のセリフやポーズをマネしたり、キャラクターを落書きできるマンガは昔から人気だった。子どもが作品を好きになるには、参加できる要素がないといけない。「かめはめ波」や「お前はすでに死んでいる」など、人気作には必ずと読者の記憶に残り、思わずマネたくなる要素が含まれている。

ぼくは青年マンガの担当だったので、マネをしたくなる要素を作品に入れ込むよりも、人間描写の深さや物語の複雑さのほうが大事だと思って編集してきた。でも、そうした考えも、自分の囚われのひとつだと感じている。

読者が声に出したくなる印象的なセリフはあるか。マネしたくなるポーズはあるか。キャラクターを描いてみたくなる絵になっているか。こうしたことをもっと意識していく必要がある。

多くの人がクリエイターとなれる時代が訪れる中で、“Common”となるコンテンツを提供できるか。編集者として考えるべき「問い」だと感じている。


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表では書きづらい個人的な話を含め、日々の日記、僕が取り組んでいるマンガや小説の編集の裏側、気になる人との対談のレポート記事などを公開していきます。

『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』などのマンガ・小説の編集者でありながら、ベンチャー起業の経営者でもあり、3人の息子の父親でもあるコルク代表・佐渡…

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