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そこに想いはあるのか? 拙さの揺さぶる力

僕たちはメッセージを伝える時に、うまく伝えないといけないと思う。

しかし、メッセージが伝わるかどうかは、伝え方のうまさではなく、そこに想いがあるかどうかが一番重要だと実感させられる、ふたつの映画に出会った。

そのふたつの映画の中にあるメッセージは、拙い英語と拙い歌だったが、「心に届く」ものだった。

ひとつは、インド映画の『パットマン 5億人の女性を救った男』

インドの小さな村で新婚生活を送る主人公が、貧しさのために生理用ナプキンが買えない妻を救うため、女性の生理を話題に出すことはタブーとされていたインド社会において、様々な困難に抗いながら、清潔で安価な生理用品をつくる実話を元にした物語だ。

この映画のクライマックスに主人公が国連本部でスピーチをするシーンがあるのだが、僕はとても心を打たれてしまった。

最初は通訳をつけてスピーチしようとするのだけれども、すぐに通訳経由だと伝えたいことが伝わらないと思って、自分の言葉で話そうとする。でも、インドの奥地にある村で育っているから、そんなに英語が上手いわけでもない。だから、流暢なスピーチではないし、使っている言葉も中学生レベルの簡単な英単語のみ。

それでも、ものすごく主人公の気持ちが言葉にこもっていて、そのスピーチのシーンは見終わった後も心にずっと残っている。妻をはじめとしたインド人女性の生活に変えたいという主人公の想いが、すごい熱量で伝わってくるのだ。

映画のもととなったスピーチがYoutubeにアップされていたので、よかったら見てみて欲しい。

もうひとつの映画は、イギリスの映画で『アンコール!!』

これは、頑固で人付き合いがほとんど出来ない夫と、陽気で明るい奥さんの、ロンドンに住む老夫婦の物語。奥さんがコーラス隊に入っていて、劇中でたくさんの曲が歌われるのだけれども、お年寄りで結成するコーラス隊なので、そんなに歌が上手ではない。下手といってもいいかもしれない。

ただ、奥さんがシンディ・ローパーの『トゥルー・カラーズ』をひとりで歌うシーンがあるのだが、その歌詞が夫を思う彼女の心と完全に重なっていて、深く胸を打たれてしまった。特に、ここの歌詞。

”and the darkness inside you
Can make you feel so small
But I see your true colors
Shining throughI see your true colors
And that’s why I love you”

頑固な旦那の魅力をわかっているのは自分だけ。自分が先に死ぬことで、夫が社会とうまく接点を持てなくなるのではないか。でも、とても魅力のある人なのだから、しっかり生きて欲しいと夫を想う妻の心に胸を打たれる。

※著作権違反かもしれないが、Youtubeにたまたま該当シーンの動画がアップされていたので、リンクを貼り付っておきます。

そして、映画の最後に、夫が奥さんのためにビリー・ジョエルの『ララバイ』を歌うのだが、これがまた胸を打たれる。

"Good night my angel time to close you eyes
And save these questions for another day
I think I know what you've been asking me
I think you know what I've been trying to say"

「僕が何を言おうとしているか、きっと君はわかってくれていたと思う」という歌詞に秘められていた亡くなった妻への信頼感。歌詞全体が妻への思いやりに溢れている。歌詞なので言葉は他人がつくったものだが、その言葉を届けたいと必死になっている姿に心を打たれた。

パットマン。アンコール。このふたつの映画は、拙いスピーチや歌にも関わらず、深く心を動かされるものを感じた。

もちろん、これはプロが演出した拙さであり、計算された演出ではある。そのシーンにたどり着くまでの物語の流れや演出が、観客の感情を動きやすくしている。

でも、スピーチや歌の映像だけを部分的に切り出したとしても、充分に人を感動させる力を持っていると僕は感じた。

人の心を動かすためには、伝えるための技術を習得することが大切だと言われることが多い。技術を学ぶための本も沢山売られている。

もちろん、技術が大切なのは間違いない。しかし、それ以上に大切なのは、伝えたい気持ちだ。

心がしっかりあれば、拙い言葉でも心が伝わる。心が伝わると気持ちが動く。だから、僕は表現を磨くことより、伝えたい気持ちを一番大切にするべきだと思っている。

これは、マンガや小説に限ったことではなく、ビジネスのプレゼンなど、誰かの感情を動かすという全てのことにおいて言えるのではないだろうか。

そこに想いはあるのか?

このふたつの映画を観ることで、改めて、その大切さに気づかせてもらえた。

この週末、コルクラボの合宿で、山田ズーニーさんのワークショップが行われた。そのことで、コルクラボのメンバーがどのように自分の心を探したのかは、「#コルクラボ合宿」でTwitterを見てもらうとわかるかもしれない。

ちょうどブログを書くために考えていたことと、ズーニーさんのワークショップの内容がリンクした。

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