リメンバーミー

人は二度死ぬ

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 多くの人の例に漏れず、僕も中学生の頃くらいから、死について考えだした。その時に魅了された考えが、「人は二度死ぬ」というものだ。

 一度目は、肉体的な死。そして、二度目は忘却による死。すべての人が、その人の存在を忘れてしまった時に、本当に人は死ぬ。一度目の死は、誰もが絶対に避けることができない。しかし、シェイクスピアのことを今も我々が話題にするように、二度目の死は回避することができる。芸術の道を志すことは、死を回避する唯一の方法だと考えた僕は、小説家になりたいと思った。それで、「forget me not」という言葉の響きが好きで、忘れな草を好きになった。そんな風に考えていたことを、『リメンバー・ミー』をみながら思い出した。

 『リメンバー・ミー』は、ピクサー作品の中で、もっとも好きな作品となった。同時にもっとも泣いた作品にもなった。脚本が完璧すぎた。

 物語は王道中の王道。主人公のミゲルが、自分のルーツをたどって旅をする。そして、自分の生きる意味を発見し、元の場所に戻ってくる。そうすると、元の場所が別の意味を持ってくる。教科書通りのヒーローズジャーニーなのだが、細部まで徹底的にこだわっている美術、音楽の魅力で、その王道さがありきたりには感じない。

 羽賀くんのシラナイ一家も、典型的なヒーローズジャーニーとして物語を構成するつもりだったので、その参考にしようと思って観に行ったのだが、ただただ感動して、ピクサーの力に悔しさを覚える結果になった。

 『リメンバー・ミー』には、王道の物語をより面白くする王道の仕掛けがある。

 時間だ。

 タイムリミットを設けると、物語は自然と緊迫感を持つ。ミゲルは、死者の日の24時間以内に自分の祖先のミュージシャンと出会って許しをえなければ、生きて戻れなくなってしまう。このタイムリミットは、よくできているが、よくある設定でもある。このようなタイムリミットがある作品は、たくさん思いつく。さらに、秀逸なのは、タイムリミットが二つあることだ。死者の国で重要な役割を果たすヘクターが、二度目の死を迎えようとしていて、ヘクターが死ぬ前に、ミゲルは許しをえなくてはいけない。二つ目のタイムリミットが、物語後半の緊張感を増して、最後の深い感動を呼び起こす。

 二つのタイムリミットを仕掛けている作品は、他の例がパッと思いつかなかった。もしも、思いついた人がいたら、コメント欄で教えてください。

 夢を追うがゆえに、家族とすごく時間がとれないというテーマは、個人的にも思い当たるところがありすぎて、より共感するところが多い映画だった。

 やっと『We are lonely,but not alone』が完全に僕の手を放れたので、久しぶりに水曜日のブログを更新することができた。

 毎週、コメントをくれた方、ありがとうございます。原稿を書く励みだけでなく、参考にもなりました。そして、購入&サポートありがとうございます。

 有料部分は、『リメンバー・ミー』で僕だったらこう編集したと思ったところと、日記になります。


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佐渡島庸平(コルク代表)

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コルク代表・佐渡島のnoteアカウントです。noteマガジン『コルク佐渡島の好きのおすそ分け』、noteサークル『コルク佐渡島の文学を語ろう』をやってます。編集者・経営者として感じる日々の気づきや、文学作品の味わい方などを記事にしています。