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『観察力』を鍛える唯一の愚直な方法

一流のクリエーター、経営者は、みなセンスがある。

では、「センス」とは何か?

それは「観察力」によって暗記したことを元に下す決定のことではないかと、僕は考えている。その観察力に気づけない人は、直感や動物的勘という言葉を、その意思決定プロセスに使うのではないか。

観察力のある人は、世界を見る「解像度」が圧倒的に高い。

カメラにたとえると、解像度はレンズの性能。観察力は、メモリの性能。いい解像度で、いいデータが蓄積されていると、観察力がどんどん上がり、アウトプット、意思決定の質が上がっていく。

では、どうやって観察力、解像度を上げていけばいいのか?

僕は色々なところのインタビューで、クリエイターには観察力が必要だと言ってきた。でも、どうやれば上げれるのかは、話してこなかった。わからなかったからだ。

コルクラボマンガ専科の講義資料を作る中で、講師たちとたくさんの議論を重ねた。その中で、観察力をあげる方法が見えてきた。

とにかく、言葉だ。
言葉は、人が唯一携帯できる武器だ。

言葉にするから暗記して、整理することができる。
頭の中で整理するから、解像度が上がる。
とにかく言葉にする。
それを徹底することが、唯一の愚直で確実な方法だ。

僕たちは、見ているようで見ていない。
それを、見ているに変えるために、言葉の力を借りるのだ。

ここにフェルメールの有名な絵がある。

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この絵を全く知らない人に伝える場合、言葉でどう説明するだろうか? ちょっと考えてみてほしい。







例えば……

絵の真ん中にメイドの女性が立っていて、台座のようなテーブルに置かれたずんぐりとした陶器に、両腕を使って牛乳を丁寧に少しづつ注ぎ入れている。

テーブルにはエメラルドグリーンのテーブルクロスがかけられていて、さまざまなパンが載っている。ちぎれたような小さなサイズもあれば、バスケットの中に大きなサイズのパンもある。また、銀製のポッドのようなものも置かれている。

牛乳を注ぐ女性は頭に白い頭巾を被っていて、髪は頭巾の中に収められている。また、上着は肘まで捲りあげた黄色い分厚い作業着を着ていて、下は赤茶色のスカートで腰に青いエプロンを巻いている。

女性は、ややがっしりとした体つきをして、肘から先の作業着から露出している腕には、うっすらと筋肉の筋が浮き上がっている。顔は牛乳を注ぐポットに向けられていて、その表情から感情は読み取れない。

画面左側に描かれた窓からは日光が射し込んでいて、女性の顔の右半分や上半身、牛乳を注ぐポットと注がれる陶器、テーブルの上を明るく照らしている。

女性のすぐ後ろには無地の白い壁があり、所どろこに釘を刺した後のような穴がポツポツあって……


このように、眼に映るものを言葉に置き換えることを、「ディスクリプション(description)」と、マンガ専科では呼んでいる。

ディスクリプションとは、記述、描写、説明、表現などの意味を持つ英単語だが、その名の通り、自分が見たものをそのまま言葉に記述していく。

一枚の絵の中には様々な情報が詰め込まれているので、ディスクリプションには結構な時間がかかる。おそらく、美術館でこの絵を、1分以上観る人はほとんどいない。観続ける力がない。

絵を言葉に書き起こすことで、漠然と鑑賞していた時には見逃していたものに気づき、フェルメールが意図したことを想像できるようになる。ディスクリプションをしない限り、フェルメールの意図を想像することは絶対にできない。

この絵に描かれた、キューピッドについて考えみよう!と言ったときに、反応できた読者はどれだけいるだろう? その人は、観ているようで観てない。ちなみに、僕もこれを初めてやった時は、「キューピッド?そんなのいないだろ?」と2回目に観直した時ですら思った。

背景の壁の右下のタイルには、キューピッドと長い棒を持つ男性の飾り絵が描かれている。なぜ、フェールメールは、この絵を描いたのか?

一説によると、タイルに描かれた絵は、この女性が勤勉に働きながらも男性を夢想していることを暗に表しているらしい。「牛乳を注ぐ女」の全体のテーマは抑制された激しい情熱だという評論もある。そういう評論のぜひは、あまり重要ではない。

このような感想は、絵を解像度高く観ないと浮かばない。そして、過去の記憶の中にストックされている他の絵へのディスクリプションと比較することで、感想の精度も上がっていく。

解像度高く観て、
正確にデイスクリプションをして、
過去の記憶と比較して、
自分の意見を持つ。

そのような能力が、「観察力」だ。

学校教育では、絵画を鑑賞する時に「見たまま、感じたまま」を大切にしようと言われる。しかし、それだといつまでも漠然と観てしまう。

「ちゃんと言葉にする」が全てのスタートなのだ。

僕たちのほとんどは、ちゃんと見ているようで、実は見たいものしか見ていない。現実をほとんど見ていないことを認識し、その見えてない部分を見ようと意識したときに、観察力が高まる。

視界に映ったものを言葉に置き換えると、脳に情報としてきちんとインプットされる。逆に言えば、言葉にしない限りは素通りされ、記憶から零れ落ちていく。

まずは、頭の中に言葉として蓄積し、バラバラだったものを繋ぎ合わせ抽象化する。そして、それを別の具体で転用する。それを繰り返して、独自の視点が育まれていく。

観察力は全ての基礎。

言葉にすることから、はじめてみよう。


追加で…

今度、GOの三浦くんが、『言語化力』という本を出す。まだ読んでないから、なんとも言えないけど、きっと三浦くんなら内容は面白いはず!

今日のブログを読んで、言葉にすることに興味を持った人は、『言語化力』を読んでみるといいかも。今週は、僕から三浦くんへの応援ブログでもある。

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