感情のプレイリストの時代には、"読み切り"の価値が見直される
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感情のプレイリストの時代には、"読み切り"の価値が見直される

音楽との出会い方や楽しみ方が、SpotifyやApple Musicが普及したことで大きく変わった。

その変化を見ていて、マンガや小説など、出版業界が扱ってきたコンテンツのこれからについて、よく考える。

音楽ストリーミングサービスが普及する前は、ROCKやJ-POPなどのジャンル以外の音楽と出会う機会はほとんどなかった。CDショップの棚を見ると、クラシックやジャズなどの棚が占める面積はごくわずか。

音楽シーンにおいて、ランキングチャートの上位に入らないジャンルの音楽は、脇役のような扱いになっていた。ましてや、ラウンジミュージックやヒーリングミュージックなど、音楽のジャンルとしてあやふやなものは、CDとして売るには弱かった。

だが、現在は、ヒーリングミュージックのようなジャンルが、ものすごく聴かれている。

理由は、プレイリストで音楽を聴くというスタイルが、ストリーミングサービスによって、一般的になったからだ。

今、シーン別の感情にあわせたプレイリストに含まれる楽曲の再生回数が、全世界的に大きく伸びている。

寝る前に聴くと落ち着くプレイリスト、お風呂の中で聴くとリラックスできるプレイリスト、作業の集中力を高めるプレイリスト。そんな風に、シーン別に自分のなりたい感情にあわせて、プレイリストを選び、音楽を聴く習慣が生まれている。シーン別だと普通の音よりも、繰り返し聞くことも多い。

僕もSpotifyを利用しているが、一番再生している音楽は好きなアーティストの楽曲ではなく、瞑想の時に流すプレリストに含まれている楽曲だ。どんなに好きなアーティストの曲でも毎日聴くことはない。だが、シーンに組み込まれているプレイリストの音楽は、習慣的に聴くことになる。

音楽は聞き手の感情に影響を与えるものだが、今までは、どちらかというと揺さぶる、高揚させる音楽の方が注目された。しかし、日常の中に音楽が溶け込んでくると、落ち着かない気持ちをリラックスさせたり、まるで魂を浄化させるように静かに感情を整えていく楽曲の価値が上がってくる。

シーン別に望まれる感情にあわせたプレイリストが、音楽のジャンルよりも、聴く曲の選択に影響を与えている。

この音楽の世界で起こっている流れは、様々な領域で起きていくはずだ。

感情別のプレイリストによる選択。

マンガや小説などのコンテンツにおいても、「寝る前に読むと、心が落ち着いて、気持ちよく眠りにつけるマンガ」とか、「早朝に読むと、気持ちが前向きになって、一日を元気に迎えられる小説」とか、シーン別に読みたい作品を選ぶ流れがくるだろう。

既にTwitterやTiktokでは、例えば、毎週金曜日の夜に「今週もお疲れ様でした」的な意味を込めて、クスッと笑えるマンガを投稿するみたいな具合に、シーン別の感情に寄り添ったマンガを投稿する人が人気を集めている。

これからは、シーン別に受け手のなりたい感情にあわせて、作品を届けることのできるクリエーターが、大きく活躍できる時代だ。

そう考えると、読み切りの価値も見直されるかもしれない。

長編のような、時間をかけて作品の世界に深く入り込ませるものだと、生活シーンに自然と溶け込むのが難しくなる。多くのシーンでは、短編の読み切りのようなスタイルのほうが望まれるだろう。

これまで、マンガ家は長期連載を持つことが望まれていた。そのほうが、作家にとっても、出版社にとっても、継続して安定的に収入が入ってくる。加えて、1巻を無料にして、2巻以降を有料にするなど、プロモーションの面からも、そのほうがやりやすかった。

だが、音楽の世界と同様に、シーン別に作品がキュレーションされて、プレイリスト化されていき、サブスクリプションの配分が入るようになると、読み切りが多くの人に読まれ、収入も十分に確保される可能性がある。

テクノロジーが発達すると、同時に、活躍できるクリエーターの種類が増え、表現の幅が増えていく。読み切りが、また人気の表現手段になる時代を予想していなかったが、そのような時代がくる可能性があると、思考実験をしていて感じた。

ちなみに、大手のマンガアプリは、誰もが長期連載ばっかりを欲していて、読み切りには原稿料などを支払っていない。しかし、『ジャンプ+』だけは、読み切りをすごく重視している。これは、将来の『ジャンプ+』の資産になるだろうし、新人育成としても、すごく意味がある。ジャンプの戦略は、すごく理に適っていて、盤石だと改めて感じた。

最後に、本や音楽など、自分に影響を与えたものを最近まとめてふりかえっている。その一環で、影響を受けた曲を集めたプレイリストを有料部分でシェアします。隠すようなものじゃないけど、なんとなく恥ずかしいので。


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佐渡島庸平(コルク代表)

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