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思考の癖の発見に、『4行日記』がオススメ

佐渡島庸平(コルク代表)

2年前から、毎晩「今日の自分」を振り返ることを習慣としてきた。

振り返りを行うと、様々な自分の感情を認識することができる。喜びや憧れもあれば、迷いや反省もある。そして、なぜ自分がその感情になったのかを掘り下げて考えてみる。

すると、「もっと、こうなりたい」とか、「次は、こうしたい」といった気持ちが自然と湧いてくる。これは、目標のために必要と思ったことではなく、自然と湧いてきた動機だ。振り返りを日常的に行うことで、自分の欲望の輪郭を捉え、自分への解像度が高まる。

ある種、振り返りとは、自分を観察する行為と言ってもいい。

ちなみに、振り返りを習慣として定着させるために、毎日の振り返りをvoicyで配信している。配信を開始してから、先日で600回を超えた。

このように振り返りを続ける中で、振り返りの「型」を更新したいと思うようになった。何か踊り場にいるかんかくがある。それで、1ヶ月ほど前から、新しい取り組みをはじめている。

それが、4行日記®︎だ。

4行日記とは、「FFS理論」の開発者の小林博士が考案した、個性を活かして自己拡大するための日記術だ。

ぼくは、5つの因子で自分の思考のパターンを知り、自己理解と他者理解を深めることのできるFFS理論に価値を感じていた。FFS理論を広げるために様々な活動をしているヒューマン・ロジック社の古野さんと『宇宙兄弟とFFS理論が教えてくれる あなたの知らないあなたの強み』という本を一緒に作ったくらいだ。

こうした経緯もあり、4行日記にも以前から興味を持っていて、振り返りの型を更新したいと思ったタイミングで始めてみることに決めた。

4行日記は名前の通り、4行からなる日記で振り返りをするわけだが、そこにはルールが存在する。1行ごとに役割が決まっていて、1行あたりの文字数は20文字以内と定められている。

最初の行に書くことは「事実」だ。今日あった出来事の中で、自分が重要だと思ったものをひとつだけ選び、事実のみを書く。次の行は「発見」で、事実から気づいたことを書く。その次は「教訓」で、発見したものを普遍化させ、自分自身へと言い聞かせるような教訓とする。最後は「宣言」で、自分はどういう存在なのかを宣言する。

4行日記では、潜在意識に落とし込みやすいように記号を使う。□は事実、◇は発見、○は教訓、☆は宣言を表現する。

例として、始めて間もない頃に、ぼくが書いたものを共有する。

□ コンサルタントから業務改善の仕方を聞いた
◇複雑な業務を複雑なまま効率化する方法がある
○複雑さは、固定的と変動的なものの組み合わせ
☆私は複雑な業務をこなす企業の経営者です

そして、日記をヒューマン・ロジック社の古野さんに送ると、フィードバックを戻してくれる。

□ コンサルタントから業務改善の仕方を聞いた
→なるほど

◇複雑な業務を複雑なまま効率化する方法がある
→なるほど。いいですね

○複雑さは、固定的と変動的なものの組み合わせ
→なるほど。面白いですね。教訓は発見したことを、より普遍化、止揚化していくところです。発見が「複雑なまま効率化する」ことの普遍化にはなっていないようです。これだと「複雑さ」の定義ですからね。おそらく「固定と変動の組み合わせ」だから、『変動部分をどうにかする』みたいない意図がありそうですね?

☆私は複雑な業務をこなす企業の経営者です
→まず「こなす」は、肯定的な表現ではありません。次に、発見が活かされていません。「こなす」のは手段ですから、その先の目的があるはずです。「私は業務を効率化している経営者です」といった宣言のほうがいいでしょう。また、宣言は常に暗唱するつもりにしてください。潜在意識に刷り込んでいくことで、勝手に「そう動く」ようにしていきます。

もうひとつ、例を共有する。最近の日記だとこんな感じだ。

□読書会で受動性について議論した
→なるほど

◇自分の軸がある人は、受動的であってもらしさが保てる
→なるほど。良い発見です

○行雲流水
→いいですね

☆私は周りの力をうまく利用している経営者です
→なるほど。惜しいかなぁ。「利用する」って、あまり良い表現には感じません。発見の「軸があるから、らしさが出る」教訓の「行雲流水」を得たのですから。例えば、「私は周囲を受け容れている経営者です」「私は仲間を活かしている経営者です」といった表現はどうでしょう。

こういったやり取りを既に30回以上繰り返していると、自分の思考の癖がだんだん見えてくる。

ぼくが古野さんからよくもらうフィードバックは、言葉の補足が多いこと。

4行日記は自分に言い聞かせるものなので、基本的に自分が理解できればいい。そして、簡潔であるほど、自分の潜在意識に刷り込ませることができる。だから、簡単明瞭に書かないといけない。そうしたフィードバックを何度ももらっているのに、反映できないのはなぜか。

それは「文章とは、第三者に何があったかを伝わるように書かないといけない」という思い込みが、ぼくの無意識の中にあったからだ。文章とはこういうものだと、勝手に判断してしまっていたのだ。

ぼくは「判断保留の態度」が大切だと、よく言っている。だが、こんな風に無意識のうちに判断してしまい、それに基づいて行動してしまっているものは意外と多いのではないか。そして、無意識で判断してるから、自分が判断していることにそもそも気づけない。

判断保留の態度と言うと、判断を先延ばしにする態度のように捉えらるかもしれないが、そうではない。自分が無意識のうちに判断してまっているものに気づこうとする姿勢が、判断保留の態度なのだ。今回の発見を通じて、そんな風に自分の考えが更新された。

とはいえ、無意識のうちに潜む自分の思考の癖は、自分で発見するのが難しい。4行日記のように、自分の頭の中にあるものをアウトプットしながら、客観的なフィードバックをもらう仕組みを取り入れるなどの工夫が必要となるだろう。

どうやって、自分を観察するための型を更新し続けていくか。ぼくにとって、この問いは人生の大きなテーマだ。


今週も読んでくれて、ありがとう!この先の有料部分では「最近読んだ本などの感想」と「僕の日記」をシェア。日記には、どんな人と会い、どんな体験をし、そこで何を感じたかを書いています。子育てをするなかで感じた苦労や発見など、かなり個人的な話もあります。

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佐渡島庸平(コルク代表)

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佐渡島庸平(コルク代表)
コルク代表・佐渡島のnoteアカウントです。noteマガジン『コルク佐渡島の好きのおすそ分け』、noteサークル『コルク佐渡島の文学を語ろう』をやってます。編集者・経営者として感じる日々の気づきや、文学作品の味わい方などを記事にしています。