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具体→抽象→具体で生まれる物語

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今までの編集者の仕事は、作家が物語という「言語コンテンツ」を作るのをサポートすることであった。

世の中は、具体的な出来事に溢れている。その無数ある具体的な出来事の中から、構造を見つけ出し、多くの人が興味をもつ抽象化した出来事を作り出す。それが、「設定」、「世界観」と呼ばれる。

そして、具体を抽象化して、作り出した設定の中で、作者の生み出したキャラクターを動かすこと、それが「物語る」行為だ。

キャラクターもまた、たくさんの人がもつ具体的な特徴を、抽象化し、一人の人間に仮託されたものだ。

つまり、作家の頭の中で物語が生まれる時、具体→抽象→具体が起きている。
編集者による打ち合わせは、それをサポートする。

作家もしくは編集者が個人的な体験を話す。それをこういうことですか?と会話の中で、一般化、抽象化する。
その一般化した事象の中で、キャラクターがどのように振る舞うか、具体を予想する。

はっきりと意識しながらそのようなことを行なっている編集者は少ないかもしれないが、いい打ち合わせでは、具体と抽象の行き来が多く、一度、抽象を挟むことで、キャラクターの具体的行動が普遍性を持つ。具体を抽象化し、抽象概念を再度、具体化している様子は、はたから見ると雑談に見える。
物語は、作家の個人的な体験が元にはなっているが、キャラクターは作家本人ではないと多くの作家が答えるのは、このような思考の流れが創作の間に起きているからだ。
新人作家の作品は、自分の個人的な体験を描いたエッセイ風のものだったり、物語的な具体をつなぎ合わせただけだったりで、具体だけで工夫を重ねている。抽象化を一度得ていない表現は、普遍性が浅く、時代を生き残らないのではないか?
どのようにして、具体と抽象を往復する能力を身につけるのか?僕は、ドラゴン桜の打ち合わせの中で身につけた。ドラゴン桜は、なぜその勉強法がいいのかを比喩を使って説明している。
ぴったりの比喩を探すという行為は、具体と抽象を行き来して、思考しなければ探せないのだ。

物語自体が、現実の大きな「比喩」と言えるかもしれない。


いつもサポート&定期購読ありがとうございます。今回のブログは、僕の中では、すごく画期的なことを思いついたつもりなのですが、何度書いても、抽象的すぎる文章で、書き直していました。定期購読の人がいなかったら、今回こそは、ブログを続けれてなかった。本当にありがとうございます!

この後は、2週分の日記になります。今回から月に一度、日記以外のコンテンツも一つ入れます。

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