
新人の成長を加速させる、完成度60%の思考法
コルクでは、行動指針のひとつに「やりすぎる」を掲げている。
新人時代は、とにかく「スピード」をやりすぎる。スピードが早まってくると、「量」をこなせるようになる。スピードに慣れ、長時間労働でなくても量ができるようなると、「質」を追求する余裕が生まれる。
スピード、量、質。
この順番で「やりすぎる」を意識していくのが、自分の成長を加速させていくために一番いいのではないか。そうした仮説を持っていることを、『「若いうちは、量をこなすべき」は本当か?』というnoteに以前書いた。
新人のうちは、粘り強く取り組んだとしても、クオリティの高いアウトプットを出すことは難しい。なぜなら、仕事は実際にやってみなければわからないことが多いからだ。だからこそ、アウトプットを早く提出し、フィードバックを受ける回数を増やす方が、成長への近道になる。
しかし、「雑な状態でもいいから、スピードを意識して、早めにアウトプットを出そう」と伝えても、多くの新人は抵抗感を抱く。中途半端な状態のもので、自分を評価されたくないという防衛本能が働いているからだろう。
どうすればこの抵抗感を取り払い、新人がスピードを「やりすぎる」状態を実現できる組織文化を育てることができるのか?
先日、あるクリエイティブ系企業の代表と話すなかで、そのヒントを見つけた。
キーワードは、完成度60%だ。
その会社では、社員に対し「60%の状態で見せるように」と繰り返し伝えているという。「雑な状態でもいい」とか「途中でもいい」といった曖昧な表現ではなく、「完成度60%」という具体的な指標を使うことで、心理的なハードルを下げているのだ。
さらに、100%の完成形を見せられると、フィードバックの内容は「良いか悪いか」という評価に留まってしまいがちだ。しかし、60%の段階であれば、残りの40%をどう作り込むかについての建設的な議論が生まれる。お互いの意見を交わしながら、より良いものへと磨き上げることができる。
とはいえ、新人にとって完成度60%とはどのようなものか、はじめはわからないことが多い。本人としては60%のつもりでも、受け手から見れば30%ほどであることも起こり得る。そんな時は、残りの30%が何なのかを伝え、そうしたやり取りを繰り返す中で、お互いの認識をすり合わせていく。
この話を聞いたとき、まさに目から鱗が落ちる思いがした。同時に、自分がこれまで使っていた「途中でもいいから」といった表現が、いかに曖昧で不十分だったかに気づかされた。
では、コルクにとっての「60%」とは、具体的にどのような状態なのか。
それを明確に定義し、途中段階のアウトプットであっても、抵抗感なく共有できる心理的安全性を育むこと。それが、組織文化として「やりすぎる」を定着させための鍵になるのだろう。
企画における「60%」とは何か。作品づくりにおける「60%」とはどのような状態なのか。さまざまなシーンにおける「60%」について、深く考えていきたいと思った。
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コルク佐渡島の『好きのおすそわけ』
『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』などのマンガ・小説の編集者でありながら、ベンチャー起業の経営者でもあり、3人の息子の父親でもあるコルク代表・佐渡…
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