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子供は誰のものか?

子供は誰のものか?

僕は、子供の人生は、子供のものだと思う。でも、子供の世話はしないといけない。その時に、親の意思はどうしても入ってきてしまう。自分の意思を反映している時に、子供の時期は、自分のもの。そんな気持ちが、入り込んできていないだろうか?

子育てをしていると、「静かにさせろ」とレストランや電車で怒ってくる人と出会うことがある。そのような態度を非難し、子育てに寛容になろうというツイートもよく見かける。子供が泣いていると、僕自身もうるさいと思うし、静かにさせたい。でも、静かになってくれないのが子供というものだ。僕は怒る人と出会うと、毎回、気持ちがモヤモヤしていた。てっきり怒られるのが嫌なのかと自分で考えていた。

でも、子供は誰のものか?という問いとともに、その状況を考えてみると、僕のモヤモヤがスッキリしてくる。世話の中心は親でも、子供は社会全体で育てるものではないか、という考え方を僕は持っている。

だから、公共の場で子供が、社会の主体としてふさわしく振る舞えない時、その場にいる誰もが子供に関わるのが自然ではないか。親に「静かにさせろ」という人は、子供は親のもので、管理すべきという思想を持っている。僕は文句を言われたことよりも、子を管理しろという思想に対して賛成できなくて、モヤモヤしていたのかもしれない。

良い問いは、思考を深めてくれる。

そもそも子どとは何か?

日本では昔から「元服」の儀式があるように、成人と子供を分ける意識が強かったようだ。そして、戦後資本主義の中で、父親は収入を稼ぎ、子育ては母親がするものという認識が社会全体で強まり、子供は母親が管理すべき対象という見方が固まっていった。それで、お受験が母親にとっての一大プロジェクトになる。

今の日本は、子供が限りなく母親のものになっている。子育ては、一人でやり切れるものではない。なのに母親が一人で全てを背負わないといけない社会の空気が、女性の社会復帰を妨げている。

一方、海外の歴史を紐解くと、「子供」という概念は発見されるものだった。ルソーが主張するまで、「体の小さな大人」と見なされていて、特別な教育が必要という考え方は一般的ではなかったらしい。そのため、産業革命の時代になっても、当たり前のように子供が工場で働き、子供は労働力として大切にすべき社会の資産と考えられてきた。

子供に対する概念が日本と海外でそんなに違うということに、調べてみて驚いた。海外では「子供は社会のもの」「社会全体で育てるべきもの」という考えが現在でも強く、その考えを前提に様々な制度設計がされている。「子供は親が管理すべき」という前提が強い日本とは違った社会がそこにはある。

子供という概念について考えていると、僕らは自然と自問自答せざるをえなくなる。

大人とは何か?

子供には様々な制限が課せられている。選挙権、クレジットカードなどなど。保護者の許可がないとできないことも多い。

大人とは、自分のやったことは全て自分で責任を取れる存在。社会は、そう定義している。こんな風に考えてくると、大人になるって難しい。子供も大人も全部、社会の決め事でしかない。

だから、今度日本では、選挙の年齢が18歳に下がり、子供と大人の境目が変わる。そして、大人であることがもう無理だという人のために、成年後見制度というものがある。この制度は認知症のことなどを想定して作られたようだが、大人も社会をうまく動かすためにできた概念にすぎないのだ。

科学が論理の積み重ねで発展した。同じように社会というものは、概念の積み重ねで長い時間をかけて発展してきたのだ。

「子供は誰のものか?」

このよくありそうな問いは、思考を深めてくれる魅力的な問いだった。

どうやら僕は、誰のものか?と問うのが好きらしい。

『エンゼルバンク』の9巻で「会社は誰のものか?」と問いかけていた。(笑)


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