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物語の力で、一人一人の世界を変える「チーム」を目指して

コルクは、ミッション・ビジョン・バリューを作り直した。

会社は有形と無形の資産、両方を作り上げる。有形の資産は、お金の価値が下がってきているのと同様に、相対的な価値は下がってきている。これからは、無形の資産をどのように積み上げていくかが、企業には問われてくる。

SNSによって「信頼」「共感」といった無形の資産が可視化され、個人はそれを貯めやすいために、インフルエンサーが生まれ、会社を超える影響力を持ち始めている。個人の方が、無形の資産を貯めるのはやりやすい。

一方、集団で無形の資産を貯めるのは難しい。でも、僕はコルクのみんなには、アフリカのことわざを共有している。

「早く行くなら一人で行け。遠くへ行くならみんなで行け」

遠くに行って、まだ見ぬ景色を見たい僕は、みんなの力を必要としている。そして、みんなが僕の指示・命令ではなく、内発的動機に沿って動けるようにするためのもの。それがミッション・ビジョン・バリューだ。

ミッションは、会社が行うことの「枠」を決める。
ビジョンは、枠の中で積み重ねる「もの」を決める。
バリューは、枠の中での積み重ね「方」を決める。

はじめのコルクのミッションは、『心に届ける』だった。僕の指示を待つのではなく、「これってしっかりとファンの心に届いているかな?」「心に届くような書き方になっているかな?」「しっかりと届いたか分析しなきゃな」と自問自答して行動できる集団になってほしいという想いを込めた。

しかし、なかなかチームが思っている方向に動き出さない。悪いのは、メンバーではなく、ミッション、ビジョン、バリューだ。この言葉のどこが悪いのだろう?なかなか問題点に気づけなく、経営メンバーと何度も話し合いを重ねて、やっと最近アップグレードできた。

◉ミッション
『物語の力で、一人一人の世界を変える』

◉ビジョン
“Create”
 時代性のある、本質的な物語を生み出し続ける
“Connect”
 ファンとクリエイターが直接繋がる社会をつくる
“Realize”
物語に宿っている、世の中を変える力を顕在化する

◉バリュー
やりすぎる、さらけだす、まきこむ

作家は、物語の中に理想を描くことで、「こういう風に自分もなりたい」「こういう世の中にしたい」と作品を受け取った一人一人の心の世界を変えることができる。そして、物語の創作に関わる者は、描かれている世界が現実になるように後押しをすることまで含めて、責任を果たすべく努力する。

それは、作品づくり、届けるだけのサポートするよりも、さらにワクワクする仕事だと僕は考えている。

例えば、コルクでは作品のグッズを作るときに、物語を頭の中で楽しむだけでなく体でも経験することで、より深いレベルで楽しめるように工夫している。

今月発売となる『宇宙兄弟』の37巻発売記念セットには、作品の中でムッタが月面に作っていた『シャロン月面天文台』の1/100模型の組み立てキットがついてくる。これも、ムッタと同じ道のりを読者に追体験してもらうことで、長年の夢を実現させたムッタの感情に浸ってほしいからだ。

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ALSの治療方法を見つけるための研究開発費を集める活動せりか基金なども、同じ発想で運営されている。

今、僕はこういった企画作りに関わっていない。フィードバックなどもしてない。僕のほとんどの時間は、新人マンガ家たちとの作品づくりに費やしている。

コルクのメンバーが『物語の力で、一人一人の世界を変える』ために、「物語の力に宿っている、世の中を変える力を顕在化する」過程で、このようなグッズが開発される。ミッション、ビジョンが、社内のメンバーにもかなりしっくりしたようで、僕が企画会議に出て、企画とは何かをじっくり教えなくても、自分たちで企画を自然と磨くようになってきた。そもそも、企画力を教えれると思っていた自分が甘かったのだ。

バリュー(行動指針)もわずかに変えた。

『さらけだす、やりすぎる、まきこむ』を『やりすぎる、さらけだす、まきこむ』と順番を変えた。

「さらけだす」が、一番始めだと動きが止まる。企画会議をイメージしてほしい。1回目の会議で、何をさらけ出せばいいのか?まずは、やりすぎてみる。企画の数でもいいし、相談した数でもいい。各自がやりすぎる。そして、そこで気づいたことを、さらけだす。そうすると、みんなをまきこみながら、企画を磨ける。

「さらけだす」という言葉は誤解をよく受ける。これは、自分の恥部や、知られたら嫌なことをオープンにすることではない。さらけだすとは、「自分の欲望が何なのか?」「自分が本当に大切にしているものは何か?」を周りに分かるように伝えることを意味している。でも、それをいきなり要求するのは難しすぎた。だから、まずは行動を最大化してみる。やりすぎる中で、自分が大切にしている価値観が浮き彫りになるし、周囲にもそれが伝わる。

新しいミッション・ビジョン・バリューはかなりしっくりきているように思う。僕よりも活躍するメンバーが何人も現れて、やっと僕がコルクを創業した価値が生まれる。その土台ができた。

ミッション・ビジョン・バリューに興味がある人は、このブログも読むと思考が深まっていいかも。僕も、コルクの戦略、採用をどのように考えているか、このレベルで社内で議論できるようになりたい!

***

今週も読んでくれて、ありがとう!

今週のブログ、実は書く気がなかった。ミッション・ビジョン・バリューの変更は、社内浸透の徹底だけでいいと考えていたからだ。そうしたら、ライターのいでっちが「しっかりと外部に公表した方がいいですよ。コルクに関心を持っていて、コルクを応援したいと思ってる人は社外にもいるので、これをテーマにしましょう」と言ってくれた。いでっちは、僕の編集者兼ライターだなと思った。いでっちが、僕にディレクションをする。

作家は、編集者に指示・命令ができない。部下ではなく、パートナーだから、相談だけができる。編集者も作家には指示命令ができない。相談だけができる。

僕といでっちの関係もまさにそんな感じで、僕がうまくいでっちに相談しないとうまく動かないし、いでっちも僕にうまく相談しないと僕がやる気にならない。自分に編集者がついてくれることで、いい編集者の行動について振り返る機会になり、とても助かっている。

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