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臆せず挑戦に踏み出せる『なあんだの法則』

「人は、人によって磨かれる。」

人はひとりで勝手に育っていくものではない。人は、人に揉まれて、磨かれ、育っていく。

だから、人が成長していくために重要なのは、本人の覚悟や意思の強さではなく、仲間と切磋琢磨しあえる「環境」だと、ぼくは考えている。

ドラゴン桜では、『なあんだの法則』というものが登場する。

なぜ東大に合格するのは、進学校の生徒が多いのか?。この質問に対して、「進学校には、そもそも頭のいい生徒たちが集まっているからだ」と多くの人は思うだろう。でも、桜木はそうではないと言う。

高校2年生の終わりの頃まで、成績的にはパッとしなかった先輩が、そこから1年間勉強して東大に受かる。そういう姿を目にした後輩たちは、「なあんだ。あの先輩でも受かるなら、自分もやってみよう」と合格のイメージが湧き、臆せず努力することで、実際に合格するというものだ。

「あいつができたんだったら、俺もできるかも」

そんな風に刺激をもらえる存在に囲まれる環境に身を置くと、臆せずに挑戦へ踏み出すことができ、結果的に自分を成長させることができる。これが『なあんだの法則』だ。

これは受験に限った話ではない。例えば、起業する人を多く輩出している企業の話を聞くと、『なあんだの法則』が起きていることが多い。「なあんだ。あの先輩でも起業できたなら、自分でもできるだろ」といった具合に、挑戦のハードルを低く感じて、起業する人が連鎖的に増えていく。

ぼく自身、自分が起業した時のことを振り返ると、『なあんだの法則』が働いていた。

当時は、大手出版社を辞めて起業する人はまだ珍しくて、「よく起業に踏み切りましたね?勇気ありますね」とよく言われた。でも、ぼくはインターネット界隈の知り合いが多く、「自分の会社を立ち上げました」という連絡をよくもらっていた。だから、「まわりもみんなやっているし、自分も大丈夫だろう」と思っていた。

だが、いざ会社をはじめてみると、会社経営とはそんなに簡単ではないことを、嫌というほど思い知らされる。ぼくが経営や組織づくりを本気で学びはじめたのは、起業した後だ。

でも、自分の選択を後悔したことはない。人が成長するために最も必要なのは、他人から聞いた知識ではなく、自分で身を以て学んだ経験だ。体験でしか、人は変われない。「まわりもみんなやっているし、自分も大丈夫だろう」というのは独りよがりな勘違いだったが、幸せな勘違いだった。

この考え方は、編集者としてのあり方にも、大きな影響を与えている。

コルクでは新人マンガ家の育成に力を入れているが、ここでも『なあんだの法則』が生まれるような環境づくりを意識している。編集者がマンガ家を育てるのではなく、マンガ家同士で学び合える環境を育てていきたい。

例えば、コルクラボマンガ専科では、ただ講義を提供するだけでなく、受講生同士の横のつながりをつくることを大切にしている。

マンガ家というのは、すごく孤独な職業だ。基本的には、ひとりで黙々と作品を描いていく。だから、自分の何が強みで、何が課題なのかがわかりにくい。そして、自分に具体的なフィードバックをくれるのは、自分を担当してくれる編集者くらいしかいない。

そうなると、担当編集者とのマッチングが重要になり過ぎてしまう。相性のいい相手と出会えたら幸運だが、そうはならないケースも多いだろう。

であれば、お互いに客観的なフィードバックを与えあったり、悩みを共有したりすることができる、マンガ家同士のコミュニティがすごく大事になってくるはずだ。「あいつができたんだったら、俺もできるかも」と切磋琢磨しあえる仲間がいることで、上達のスピードも段違いに変わるだろう。

実際、コルクラボマンガ専科の立ち上げから5年くらい経つが、そうしたコミュニティの力を感じる瞬間が多々ある。ぼくら講師以上に、一緒に学ぶ仲間の存在が、上達の大きな原動力になっている。

そして、マンガ専科の卒業生の人数も500名近くなってきたこともあり、この横のつながりを広げるべく、新しい取り組みをはじめることにした。

そのまんまの企画名で、「マンガ家交流会」だ。

https://x.com/corkagency/status/1785640316122648797?s=46&t=2GBjQzcfq3wCDKJIfaFd5w

コルクと仕事をするしないは置いておいて、マンガ家同士が交流できる場を作りたい。そういう想いで立ち上げた企画だ。コルクラボマンガ専科や東京ネームタンクの講座を受けた人はもちろん、それらの講義を受けたことのないマンガ家でも参加できる。

もともとコルクという会社自体が、クリエイターがより充実した創作活動をするために必要なものを提供したいと思って、立ち上げた会社だ。作家のエージェント業という発想も、その視点から生まれた。

そして、クリエイター同士の交流の場を整えていくことは、エージェント業と同じくらい重要だと感じていて、この取り組みに会社として力を入れていくべきだと感じている。

このnoteを読んで、「マンガ家交流会」に興味を持ってくれたマンガ家の人は、是非気軽に参加してみてほしい。新人マンガ家でも、すでに連載を経験したことのある中堅マンガ家でも、大歓迎!


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表では書きづらい個人的な話を含め、日々の日記、僕が取り組んでいるマンガや小説の編集の裏側、気になる人との対談のレポート記事などを公開していきます。

『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』などのマンガ・小説の編集者でありながら、ベンチャー起業の経営者でもあり、3人の息子の父親でもあるコルク代表・佐渡…

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